韓国・朴槿恵政権発足から3年 安保で強硬、成果出ぬ経済

 韓国の朴槿恵大統領が25日で就任から3年を迎えた。武力挑発を止(や)めない北朝鮮に断固たる姿勢で臨む半面、経済ではこれといった成果に乏しい。直近の支持率は42%で不支持(45%)と拮抗(きっこう)している。4月の総選挙、来年末の大統領選で引き続き有権者が保守政治を選択するのか残り任期2年が正念場だ。(ソウル・上田勇実)

「慰安婦」合意で「反日」抑制

国内親北派清算に大ナタ

総選挙・大統領選へ正念場

 朴大統領の国政運営で最も評価されているのが安全保障問題だ。就任早々、休戦協定の白紙化宣言などで北朝鮮から揺さぶられた朴大統領は、その後も続いた各種の挑発行為に一貫して毅然(きぜん)とした態度を貫いてきた。

朴槿恵大統領

韓国国会で演説する朴槿恵大統領=16日、ソウル(EPA=時事)

 最近では4回目核実験(1月6日)と事実上の長距離弾道ミサイル発射(2月7日)への独自制裁として、これまで南北関係がどんなに緊張しても続いてきた北朝鮮の開城工業団地の操業中断を決断。これを説明するため国会で演説した朴大統領は北朝鮮の「体制崩壊」にも言及するなど、異例とも言える強硬姿勢を見せた。

 クーデターで政権を取り、その強権的なやり方から「軍事独裁」とたびたび批判されてきた父、朴正煕大統領譲りとも思える強気のスタイルに、国内保守派は一定の評価をしている。

 しかし、就任式で「第2の漢江の奇跡」を成し遂げると宣言した経済では、高度経済成長を牽引(けんいん)した父親のようなわけにはいかず、これといった成果を出せずにいる。

 広がり続ける貧富の格差を是正して富の分配を促す「経済民主化」や新しい成長エンジンの発掘を支援する「創造経済特区」、強大な既得権を有する労働組合にメスを入れる改革などはいずれも道半ば。そもそも大統領の掛け声だけでどうなるものでもない。

 外交で際立ったのは昨夏の北京での「抗日戦勝70周年記念式」への出席などに見られた中国傾斜路線と、いわゆる従軍慰安婦問題を首脳会談の前提条件に置き続けたことで悪化したままだった日韓関係だったが、昨年末に劇的とも言える日韓「慰安婦」合意に達したことを契機に、これまでの「反日」が後退した印象を与えている。

 ただ、朴大統領の執拗(しつよう)とも言える「反日」は日本社会にこれまでにない「嫌韓」感情を広める結果を招いた。このままいけば日本人の韓国歴代大統領に対する好感度は朴大統領が最低になる可能性すらある。

 中国傾斜は、もともと中国に接近したのは韓国主導の南北統一問題で中国を説得するための戦略的接近だったとされる上、このところの北朝鮮による度が過ぎる武力挑発で韓国としては日米韓3カ国枠組みに戻らざるを得なくなった。そしてついには中国が反発していた高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)の在韓米軍配備の話が米韓両政府間で正式に始まってもいる。

 国内政治に目を向けると、まず評価されるべきは左翼との闘いだ。特に金大中・盧武鉉両左派政権時代に各界各層で“活躍”するようになった親北朝鮮派の悪影響を、李明博前政権では遮断し切れなかったため、その清算に大ナタを振るった。

 例えば、北朝鮮とのつながりが疑われる親北政党・統合進歩党の国会議員が内乱扇動罪で有罪判決を受けた事件や憲法裁判所による統合進歩党の解散命令は、政権の意向に司法が左右される韓国では朴政権の親北派に対する厳しい認識が少なからず反映されたと言えよう。

 また左翼史観に凝り固まる国内歴史学界の影響を強く受ける中高歴史教科書の左傾化問題では、これを是正させるため教科書国定化に踏み切った。

 一方、執務スタイルでは側近の対面報告が少なく、人事も1人で決めてしまうなど疎通の無さが問題視され続けた。

 2014年4月の大型船「セウォル号」沈没事故の際も、何時間も青瓦台(大統領府)の中で誰とも直接会わずにいたことが後に明らかになった。

 これを男性との密会のウワサと結び付けた産経新聞前ソウル支局長の記事に対しては、最後まで自らの意思表示をしないまま、朴大統領の顔色ばかりを見た検察当局が無理な起訴に踏み切り、結果的に韓国の言論の自由の無さを世界に示す羽目になっている。

 残り任期2年で業績作りとともに大事なのが4月の総選挙と来年12月の大統領選の行方だ。支持率などから与党有利の情勢が続いているが、政権交代を目指す野党陣営では再編の動きも加速している。

 どこの国も有権者にとって政治に期待するのは常に経済だが、韓国の場合は北朝鮮による武力挑発が選挙に与える影響を意味する「北風」が時に票の行方を左右した。

 このところの北朝鮮による核・ミサイルという「北風」で、保守が結集し総選挙で与党が勝てば大統領選での保守候補再当選に弾みがつく。一方、「戦争か平和か」と訴える野党の票が伸びれば政権交代の道も開かれる。