北朝鮮の軍拡いつまで許すのか


 北朝鮮が潜水艦発射型の弾道ミサイル(SLBM)を日本海で発射した。確認されているものでは今年5月に続き2回目で、発射は失敗に終わったもようだが、国連安保理決議に対する重大な違反行為であり、こうした危険な武力増強は決して許されない。

中朝による新たな脅威

 韓国政府によれば、ミサイル発射は先月28日に最高指導者・金正恩第1書記が参観する中で行われたとみられる。だが、水中から海上に出た後の飛行は確認されず、ミサイルの破片が海面に漂っていた。

 北朝鮮は先月11日から今月7日まで東部・江原道元山の沖合の日本海上に航行禁止区域を設定し、ミサイル発射の可能性があると予告していた。

 北朝鮮は今のところ発射に言及していない。前回「試射は成功した」と主張して金第1書記が満面の笑みをたたえる写真を配信したのとは対照的で、実戦配備にはなお時間がかかることをうかがわせている。だが、問題は韓国政府が公式に認めたように北朝鮮がSLBM開発を続けているという事実である。

 SLBMの脅威は発射の瞬間まで相手のレーダーなどに察知されにくいという点にある。北朝鮮はここ数年、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の性能向上や核弾頭の小型化などに総力を挙げているとみられ、これらの技術が一定の水準に到達した場合、米国はいつどこから飛んでくるか分からない北朝鮮のミサイルと向き合わなければならないことになる。

 中国が南シナ海の岩礁を埋め立て軍事基地化する恐れが出ている問題で米国が神経を尖らせる背景には、中国がここを拠点に米国の潜水艦能力を封じることによって自国のSLBMで米国と対等な軍事力を有する狙いがあるとの見方もある。

 北東アジア周辺の海域が中朝両国による新たなSLBMの脅威にさらされるという事態は、当然日本にとっても看過できるものではない。秋に成立した安全保障関連法に基づき、日本に新たな防衛力が求められる局面が出てくるかもしれない。

 北朝鮮が今回、SLBM発射に踏み切ったのは外交上の理由もありそうだ。まずは来週に予定されている韓国との次官級会談で主導権を握るためだ。2010年に起きた韓国哨戒艦撃沈事件に対する報復措置として発動された韓国独自の対北経済制裁「5・24措置」の解除などを要求してくることが予想される。

 また、成功すれば国内向け宣伝に利用していただろう。「米国に対抗できる軍事力」「科学技術力の成果」などと誇張して金第1書記の求心力アップにつなげるものだ。

 北朝鮮は核とミサイルで地域に緊張をつくり出し、交渉相手を追い込んで最大限に譲歩させ経済的な実利を得ようという「瀬戸際外交」をより有効なものにするため軍拡に血道を上げてきた。いつまでもこうしたことが許されていいはずはない。

日米韓で協議重ねよ

 日本は米国、韓国とともに情報共有や危機管理の協調体制構築を抜かりなくやらなければならない。これまで以上に緊密に協議を重ねていくべきだ。

(12月1日付社説)