五輪基本方針、テロ防止へ万全の備えを


 政府が2020年東京五輪・パラリンピックの基本方針を決定した。過去最多の16個を上回る金メダル獲得を目標に掲げ、テロやサイバー攻撃への対応など安全確保対策の強化も打ち出した。特に、パリ同時テロに見られるようにテロの脅威が高まっている。防止に向けて万全の備えが必要だ。

 「金」最多更新を目標に

 日本は1964年の東京五輪と2004年のアテネ五輪でそれぞれ16個の金メダルを獲得した。2度目の東京大会では、開催国の威信を懸けて記録更新を目指し、選手の育成強化を図る構えだ。

 政府が金メダル数の目標を設定したことを批判する向きもある。だが基本方針では、開催の意義として東日本大震災からの復興の後押しを明記し、国民総参加で「夢と希望を分かち合う大会」を目指すとしている。金メダルの過去最多を更新すれば、被災者を励まし、日本の将来を担う子供たちに夢や希望を与えよう。東京大会の最も大きなレガシー(遺産)ともなるのではないか。

 もちろん、金メダル獲得は競技の公平・公正性確保が大前提だ。ロシア陸上界の組織的ドーピング問題では、スポーツによる国威発揚を図るため、政府関係者も関与していたとされる。基本方針では、ドーピングの排除を徹底するとしている。

 日本アンチ・ドーピング機構(JADA)は検査、分析とも海外の評価は高い。だが、五輪期間中は2週間で6000~7000件の検体を分析しなければならない。人員や機器を増強し、体制を強化すべきだ。

 パラリンピックでは史上最多の参加国・地域数を目指す。パラリンピックという用語が初めて使われたのは前回の東京五輪で、20年大会は同一都市で2度目の開催という初のケースとなることを踏まえたものだ。大会に向けてハード・ソフト両面の環境整備を急ぎ、一般の障害者にとっても東京が一層住みやすい都市となるようにしたい。

 政府が最も力を入れなければならないのはテロ対策だ。五輪のような大きなスポーツ大会はテロの標的となりやすい。13年4月に発生したボストン・マラソン爆弾テロは記憶に新しい。

 五輪でも1972年のミュンヘン大会で、パレスチナ武装組織がイスラエル選手団の宿舎を襲撃し、11人を殺害したテロが生じている。基本方針には、安全に関する情報集約のため、2017年7月をめどに「セキュリティー情報センター」を設置することを明記した。

 一方、政府は省庁横断でテロ情報などの収集に当たる「国際テロ情報収集ユニット」を12月上旬に新設する。外務省や警察庁、内閣情報調査室などから、アラビア語や中東情勢に精通した人材を集め、中東地域の在外公館に重点的に配置する。しかし、こうした情報収集は訓練を積んでいないと難しいとの指摘もある。東京五輪に向け、要員の育成も必要だ。

 「共謀罪」創設を急げ

 大会の成功には、テロなどの謀議に加わっただけで実行に至らなくても処罰対象となる「共謀罪」の創設も欠かせない。法整備を急ぐべきだ。

(12月2日付社説)