14年進まぬ国会のテロ防止法審議


韓国紙セゲイルボ

どのように守る?国民の生命

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立てこもり事件が発生したバタクラン劇場周辺に展開する警官=13日、パリ(EPA=時事)

 「懲毖録」。壬辰倭乱(文禄の役、1592年~93年)の時、領議政で都體察使であった柳成龍(ユソンリョン)が倭乱に関して書いた本だ。

 自序にこうある。「『詩経』周頌・小”篇首章に予其懲而”後患(予、其れに懲りて後の患いを”(つつし)む)とある。これが懲毖録を書く理由だ」。

 弾劾で官位剥奪されて安東へ帰郷した柳成龍の頭の中を埋め尽くしたのは、倭乱の悲劇は繰り返してはならないという思いだ。

 倭乱直前、通信使として日本に偵察に行ってきた正使の黄允吉(ファンユンギル)は、「兵禍があるだろう」と報告し、副使の金誠一(キムソンイル)は、「そのような兆候は見られなかった」と否定した。金誠一曰く、「黄允吉の話は行き過ぎて、人心を驚かせるもの」といった。金誠一は東人。黄允吉は対立派閥の西人だ。

 金誠一と同じ東人の柳成龍はこう考えた。「黄允吉の報告が採用されていれば、朝鮮の民がこのように悲惨な目に遭わなかったのではないか」

 有備無患(備えあれば憂いなし)。懲毖録を貫く精神はこの四文字に要約される。

 イスラム武装団体IS(イスラム国)のテロで世界が不明瞭だ。13日パリでのテロ。130人が亡くなり数百人が負傷した。過去と質的に異なるテロだ。「次の目標はローマ、ロンドン、ワシントン」と公言する。西側主要都市に1級の警戒令が下されている。

 考えなければならないことはわれわれの安全だ。正しく対応しているのか。そうでない。米国と軍事同盟を結んでいるとテロ安全地帯にはなれない。この5年間に韓国から追放したテロ危険外国人48人はなぜ大韓民国に入って来れたのだろうか。

 テロ防止法が、14年間、国会で昼寝している。野党が「査察と世論操作をする」として、反対しているからだ。

 OECD(経済協力開発機構)・G20会員国42カ国中、テロ防止法を持っていない国は4カ国だけだ。国際テロリスト名簿に上がった危険人物を捉えても、追放することしかできない。これが正常なのか。「テロの防壁」はない。国民の生命をどのように守るか。

 汝矣島で広がる政争は東人・西人の党派争いによく似ている。柳成龍の懲毖録一つでも足りない。国民が悲惨な状況になった後に、また「テロ懲”録」を書かなければならないのか。本当に情けない話だ。

(姜浩遠(カンホウォン)論説委員、11月24日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。