あす日韓首脳会談 米国の要請で韓国決断
「慰安婦」進展には懐疑的
韓国世宗研究所日本研究センター長 陳昌洙氏に聞く
3年半ぶりとなる日韓首脳会談が2日、ソウルで行われる。韓国の朴槿恵大統領は就任以来、いわゆる慰安婦問題で日本側が“善処”することを会談の前提条件にしてきたことから考えると、韓国の事実上の方針転換とも受け止められる。なぜ会談実現に至ったのか。日韓双方の外交当局者と頻繁に会っている韓国政府系シンクタンク世宗研究所の陳昌洙・日本研究センター長がこのほど来日、韓国側の事情を聞いた。(聞き手=編集委員・上田勇実)
――なぜ韓国側は日本との首脳会談に応じたのか。
今年に入ってマスコミの論調を中心に首脳会談を行うべきだとの世論が広がり始めたことで、韓国政府も首脳会談をしやすい環境になっていた。さらに9月に米韓首脳会談でオバマ大統領から日本との首脳会談に応じるよう強く要請されたことが大きい。
――朴大統領は「慰安婦」問題で日本から譲歩を引き出せると読んでいるのか。
そんなことはない。ギリギリまで韓国側は努力するだろうが、日本の官邸は従来の立場を固持している。韓国のマスコミは首脳会談開催の発表で最初は日本が譲歩するのではないかと期待したが、私は記者たちに日本の厳しい現状を伝えた。
――取りあえず首脳会談をするという姿勢か。
前日に開かれる韓中日首脳会談をきっかけに慰安婦問題などで解決策を模索しようというのが韓国の立場だ。
――「慰安婦」問題では新しい基金の設立案が検討されているともいわれる。
日本政府による第2のアジア女性基金の構想は安倍晋三首相自身も知っているはずだが、自民党を中心に反対が多い。
――午前中に行われる会談の後、共同記者会見も午餐(ごさん)会もないという。あまり成果を期待できないと思って韓国側が希望したのか。
朴大統領は今回の会談で慰安婦問題の進展を期待できないと思っている可能性がある。日本には韓国にこの問題ばかり執着されるのを避けたいという思いがある。互いに相手と話すことに若干の疲労感もある。
――会談では産経新聞の加藤達也前ソウル支局長の起訴問題についても議題に上がるか。
日本側は話したいだろうが、青瓦台(韓国大統領府)は政権が介入する問題ではなく、あくまで司法がやることだと言っている。
――今年は日韓国交正常化50年。ようやく実現する首脳会談で雰囲気が変わるという見方もある。
日韓間には対立を引き起こす背景があり、安倍政権、朴政権の任期中はもちろん、それが終わった後も関係改善は楽観視できない。時代の変化で中国を見る目が違い過ぎる。日本は安全保障上、中国に警戒を抱いているが、韓国は南北統一のため中国を味方に付けたいという戦略があり、米国だけに寄り添う従来の外交を脱皮し、独自外交をやろうとしている。
――韓国にとってやがて日本より中国の方が重要になるか。
それはない。韓国にとって日本より中国の方が近くなることはない。日本が韓国を敵対視するようなことだけは避けたいというのが韓国人の心理だ。






