二重の“峡谷”に陥った韓国史 教科書認定で政治家・学者が対立


韓国紙セゲイルボ

 韓国史教科書の検認定か国定かをめぐって、与野党、政府と学者が対立し、国史のアイデンティティーと多様性が正面衝突している。

 検認定を主張する側の名分は、学問の自由と歴史を見る視角の多様性確保だ。国定を主張する方の理由は、これまで検認定教科書が大韓民国のアイデンティティーの混乱と自己否定を招いてきたという判断だ。

 韓国の青少年は何の知識的保護や安全装置なしに植民史観や左翼史観に晒(さら)されてきた。独自に一貫したテキスト(国史と哲学)を書く能力を備えていない韓国の人文学は事大・植民主義と植民時代の傷と跡に伴う奴隷的怒りで、まだ歴史の主人になれていない。

 北朝鮮はこれまで韓国政権の正統性を傷つけ卑下し歪曲(わいきょく)させてきた。その影響を受けた左派指向の検認定教科書で学んだ青少年らが、こうしたイデオロギーによってアイデンティティー混乱を体験してきたであろうことは容易に察することができる。韓国に暮らし、韓国の発展と恩恵を享受しながらも、国の正統性を否定しなければならない心理的倒錯と分裂に陥った彼らに祖国に対する自信を植え付けなくてはならない。

 韓国、北朝鮮の理念闘争を見れば、圧倒的に北朝鮮優位だ。韓国にはさまざまな理念が自由に競争しており、国民所得の増大によって理念闘争の必要性と強度は落ちている。その半面、北朝鮮は金日成主義一つだけが存在でき、貧困はこれをより一層強化させている。金日成主義は理念闘争に檀君神話を戦略的に融合させることで、イデオロギーの神話化を進め、民族正統性の面でも優位を先行獲得している。

 これに比べて、韓国の主流を形成している歴史専門家たちは概して実証史学の名の下に植民史観に染まっている。韓国のキリスト教勢力は檀君を迷信・偶像と排斥している。教科書波動は古代神話から現代国家体制に至るまでをまるごと揺さぶりながら、党派と分裂を誘導しているのだ。

 最も悲しい現実は植民史学者らと民衆史学者らが互いに違う目的で検認定を要求しているという点だ。前者は学問の自由と多様性という名目で植民史観の存続のために、後者は左派理念を若い層に効果的に植え付けるために。

 一つ明らかなのは検認定のどちらを選んでも、韓国史のアイデンティティーを探すのは難しいという事実だ。古代史は植民史学者が歪曲し、現代史は民衆史学者が歪曲している。韓国史は二重の峡谷に陥っている。

(朴正鎮(パクジョンジン)文化評論家、10月20日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。