MERSと韓国当局の無能・無策
韓国紙セゲイルボ
災禍招くリーダーシップ不在
MERS(中東呼吸器症候群)が韓国に上陸して1カ月が過ぎたが、政府の対応は昨年4月のセウォル号惨事を連想させる。
初期対応に失敗して、現在の事態を招いた政府の対応を見れば、MERS事態は卓上行政の典型事例で、特に保健当局の対応は無能・無知・無誠意・無政策だと叱責せざるを得ない。
関係当局では感染病が発生すれば、当然、感染者と接触した人を全数調査し、疑い患者に対する徹底した検診はもちろん、隔離措置をすべきであった。
しかし、当局が“ゴールデンタイム”を逃して、対応にもたついている間、疑い患者は自宅隔離中にゴルフに出掛けるなど、管理はザル状態、MERSはソウルを越えて地方にまで広がってしまった。
それでも当局は感染患者が経て行った病院の名前を明らかにすることを拒否し、あたかも自宅隔離が期待した通りになりつつあるようなブリーフィングを続けていた。
しかし、確診患者と死亡者が相次いで出ると、MERS患者発生18日目にして、総理代行が関係閣僚および関連地方自治体長と共同対応を約束する会見を行った。
今回のMERSに対する政府の対処を見れば、エボラが西アフリカで発生して、米国大陸に上陸した時、米政府が取った迅速な対応と大きく比較される。当時、米政府は緊急対策会議を数回開き、細かい防疫対策とリアルタイム状況を国民と共有し、「エボラとの戦争」に対処して国民を安心させた。
医学界では未確認の病気が発生する場合でも、病気を扱う医学的手続きと対策はかなり以前から発達してきた。韓国も例外ではなく、これまで戦争と分断の国難の中でも、国民の保健を脅かす各種伝染病と病気を予防・治療してきた。少なくとも2003年SARS(重症急性呼吸器症候群)が発生した時、韓国は「予防先進国」といわれた。しかし、今回、われわれはMERS発生世界2位国という汚名を着ることになった。
過去と現在の病気対策がいったいどのように変わったのかと国民は首をかしげている。以前より多くの人材と予算が投入されているにもかかわらず、なぜ混乱と無秩序がこの国を覆い、政府が国民を安心させられないのか。
このような点から推測してみると、MERSなど国家的災難対処に対する問題点はまさに「公職リーダーシップの不在」という結論に至ることになる。
(趙昌鉉〈チョチャンヒョン〉(社)政府革新研究院理事長・前漢陽大大学院教授、6月15日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。