金総書記死去3年、脆弱さ残る正恩氏の権力基盤
北朝鮮の金正日総書記が死去したとされる日からきょうでちょうど3年がたつ。若く経験が浅い上、権力基盤も弱い息子、金正恩氏への後継を急いでいた最中の出来事だったが、その正恩氏は父の遺志を受け継ぐかのごとく、ひたすら独裁政治の道を突き進んでいる。
「面従腹背」の側近も
正恩氏は祖父、金日成主席から続く世襲3代目の自分が「革命の伝統」の継承者であるという“正統性”をアピールしながら党第1書記をはじめ次々に党や軍の主要ポストに就任し、最高指導者になるための手続きを完了させた。金総書記が、金主席死去後の3年間を喪に服してから総書記に就任したのと比べると、かなり急いだものだったが、それだけ権力掌握に対する不安が大きかった証拠と解すべきだろう。
金第1書記は「現地指導」と呼ばれる軍部隊や工場などへの視察、各種行事への参加を意欲的にこなし、その様子を頻繁に国営メディアに報じさせ、「人民のために働く」という献身的イメージを国内に刷り込んでいった。
李雪主夫人を同伴することもしばしばあり、従来の偶像化に加え、若き指導者に見合う変化を演出した。
当初、日本をはじめ韓国や米国など周辺国の専門家たちは、金第1書記の国政運営能力に懐疑的な見方を示していた。約20年かけて激しい権力闘争を勝ち抜き、基盤を築き上げた父とは違い、自らの権力を固める時間が余りにも短かったためだ。
だが、大方の予想を覆し、正恩体制は軌道に乗りつつあるかに見える。核実験や長距離弾道ミサイル発射など軍事的強硬路線で求心力も高めた。特筆すべきは1年前、叔父で事実上のナンバー2として金第1書記を支えた張成沢・党行政部長を「反党反革命的分派行為」の容疑で逮捕し、処刑したにもかかわらず、体制がそれほど動揺しなかった点だ。
金第1書記は恐怖政治で国内を抑え込み、「張成沢一派」を中心に粛清は今なお続いているとも言われる。かつて身近に接したことのある人たちの証言によれば、金第1書記は勝ち気で権力欲が旺盛だ。祖父や父を上回る暴君になる可能性すら秘めている。
とはいえ、足元の権力闘争に巻き込まれないだけの盤石な基盤を備えたとは言い切れない。今は表向き従っていても、いざ自分に危害が及ぶと判断すれば、いつでも反旗を翻す準備をしている「面従腹背」の側近たちもいることだろう。
また金第1書記の外交デビューがいまだ実現していないのも弱みだ。これまで中国やロシアには最側近の一人である崔竜海・党書記を特使として派遣したが、最高指導者でありながら首脳会談に臨めずにいる金第1書記を、習近平国家主席やプーチン大統領がどこまでパートナーと認知しているか疑問だ。
米韓との連携不可欠
拉致問題をはじめ北朝鮮との間で深刻な懸案を抱える日本は、常に金第1書記の動向に注意を払う必要がある。
情報収集や政策面で米韓両国との連携が不可欠だ。
(12月17日付社説)