「非正常」が正常化した韓国


韓国紙セゲイルボ

政府の公約破棄は深刻な重症

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韓国客船「セウォル号」沈没事故の遺族らが泊まり込むソウル中心部の広場に設置されたテント=10月14日(時事)

 「非正常」が圧倒的ならば「正常」に化ける。これまで朴槿恵(パククネ)大統領の意思と現実は正反対に展開した。それが直されるどころか、普遍化している。

 朴大統領は「約束と原則」を重視するが、約束は次々にほころびる。大統領選の公約である「経済民主化」は跡形もない。天下り人事も実際、落下傘の行列だ。取り返すと言った戦時作戦統制権(戦作権)は無期限延期してしまった。「増税なき福祉」の約束も、たばこ税、住民税、自動車税など庶民を圧迫する増税が並ぶ。

 約束は守れない場合もあるが、本当に深刻な重症の非正常は約束を破る過程にある。国民経済、国家安全と直結する重大な公約を破棄しながら、何の説明もない。謝罪どころか弁解さえなく、与党内からも批判が出る始末だ。

 セウォル号惨事以後も非正常の時間が続いた。公権力はなぜだだ一人の命も救うことができなかったのか、そのような政府の存在理由を問い詰めるのは当然のことだ。

 しかし、あきれたことに「最終責任は私にある」(5月19日対国民談話)とした朴大統領は急変し、遺族らを無視して「純粋な遺族」うんぬんし、「仕分け」に出た。以後、与党ではセウォル号惨事を“交通事故”(朱豪英〈チュホヨン〉セヌリ党政策委議長)と遠回しにして意味を縮小し、断食しながら真相究明を求める遺族の脇で会員たちが「暴食パフォーマンス」さえ行った。この非人間的行為と言い争いに、責任は消えて真実は隠蔽された。

 初めから「国家改造」や「積弊の清算」とかいう虚(むな)しい捜査の代わりに、真相究明の意思だけを明確にしてもよかったことだ。そうすれば、惨事以後の時間は犠牲者の魂を鎮め、遺族らを慰めながら、明日の惨事を防ぐ生産的な時間になっただろう。

 ごり押しはすでに各種の政策にも現れている。短期浮揚策メーンの「崔”煥(チェギョンファン)ノミクス」では、不動産景気を浮揚させるために、家計負債の危険性は過小評価しながら「金を借りて、家を買え」とそそのかしている。

 相次いだ基準金利引き下げに、不動産金融規制緩和で雷管の安全ピンは抜かれた状況だ。「第3金融危機への招待状」(金泰東〈キムテドン〉成均館大経済大学教授)という警告が出てくる理由である。

 米国経済の碩学(せきがく)ジョセフ・スティグリッツは、「景気低迷の長期化は危機以前の投資の約40%が不動産に集中した結果」と診断した。韓国では1000兆ウォンを軽く超えた家計負債中、住宅担保貸し出しが半分以上だ。

 「非正常の正常化」時代、政府は信頼を失い、国民の暮らしは危険に瀕(ひん)している。

(リュ・スニョル専任記者、11月1日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。