「セウォル号」悪用する政治扇動家


韓国紙セゲイルボ

極右・極左勢力双方が強行

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19日、ソウルの大統領府で、客船沈没事故について国民向け談話を発表し、謝罪する朴槿恵韓国大統領(AFP=時事)

 セウォル号事故では、国民的哀悼と怒りを悪用して、事態の本質を歪曲(わいきょく)し誇張することで、深刻な混乱を助長しようとする政治扇動家がいる。

 彼らは国民の利益よりは自身の特定政治利益のために、大衆から病的な興奮と熱情を引き出す。各種の流言飛語とキャンペーンで大衆を画一的に動かし、自身の目的を遂げようとする。それが憂慮されるほど悪化している。

 政治扇動はこれまで左派の専売特許のように見なされてきたが、実際には右派によっても行われる。今回の事態では極右・極左双方が強行しており、国民分裂を助長させかねない。

 まず、遺族を詐称する人々が追慕を言いつつ、朴槿恵政府の退陣を叫び、全国教職員組合はセウォル号事故を「朴槿恵政府の能無さによる他殺」と批判する動画をアップした。

 また、ソウルや安山などで行われた追慕ろうそく集会を反政府闘争にすり替えようとする試みが乱舞してもいる。「セウォル号惨事は事故でなく虐殺だ」「朴槿恵を捕まえよう」等の垂れ幕が出て極端な扇動が行われた。これを主導した人物が過去のろうそくデモに主導的に参加した団体所属というのも問題だ。

 米国のある韓国人団体がニューヨーク・タイムズに政府を批判する全面広告を出した。「韓国政府がメディア検閲と操作で真実を隠している」と主張している。

 極右勢力の政治扇動もセウォル号事態を色分け論争にすり替えている。「朴槿恵を愛する会」は犠牲者遺族までも「親盧左派」「従北左派」「共産党赤」等と色分けし、セウォル号惨事を従北理念論争にねじ曲げた。

 7日、自由青年連合など保守団体は「セウォル四傀」として、進歩的人物と報道機関を名指しし、詐欺および海上警察の公務執行妨害で告発した。

 これら左右の政治扇動家らは自分たちの理念でスケープゴートを作り、相手を清算しようとする。そうしている間に韓国社会は精神的に疲弊し、敵愾心(てきがいしん)だけが増幅されている。6月4日の地方選挙が近づき、政治扇動はその絶頂に至るだろう。

 しかし、幸いなことは、犠牲者遺族は自分たちが主催する集会以外にはいかなる場合にも団体活動に乗り出さないと明らかにしたことだ。絶体絶命の国家危機の中で遺族の崇高な追慕精神が小さな希望を吹き込んでくれた。

 国民は危機の時、いつも賢明に克服してきたし、また今回も国民自らが克服の知恵を発揮するだろう。

(梁勝咸〈ヤンスンハム〉延世大教授・政治学、5月14日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。