日米韓連携 韓国が反日改めなければ困難


 茂木敏充外相は訪問先のロンドンでブリンケン米国務長官、鄭義溶・韓国外相と会談し、北朝鮮の完全な非核化に向け3カ国で緊密に連携していくことで一致した。ただ緊密な連携は、元徴用工や慰安婦をめぐる問題で韓国が反日姿勢を改め、冷却化している日韓関係の改善に動かなければ難しい。

関係修復の糸口見えず

 バイデン米大統領は施政方針演説で、北朝鮮による核開発を「米国や世界に深刻な脅威」と指摘。米国は4月末に北朝鮮政策の見直しを終え、完全な非核化を目指し「現実的なアプローチ」を取ると発表した。

 完全な非核化の見返りに制裁を全面解除するトランプ政権の「グランドバーゲン」や、北朝鮮が非核化への具体的な措置を講じない限り対話に応じないオバマ政権の「戦略的忍耐」とは違い、長期的な非核化に向けた「段階的な合意」を目指す方針だという。

 北朝鮮の金正恩総書記は1月の朝鮮労働党大会で、米国を「最大の主敵」と位置付けて「超大型核弾頭の生産も持続的に推し進める」と強調。「1万5000㌔の射程内の対象を打撃する命中率を向上させ、核先制・報復打撃能力を高度化する」と述べ、米本土を狙う核戦力の強化方針を示した。

 こうした発言には、米国を対話の場に引き出し、制裁解除に向けて交渉を進めたいとの思惑があろう。今月下旬の米韓首脳会談の前後に、北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射し、米国を揺さぶろうとするとの見方も出ている。

 会談では、北朝鮮に国連安全保障理事会決議の履行を求めることを確認した。決議違反に対する制裁を徹底し、非核化に結び付ける必要がある。

 茂木外相は「北朝鮮への対応で3カ国の連携は不可欠だ」と強調した。だが、日本と韓国との関係は冷却化している。

 日韓外相会談では、茂木外相が元徴用工や慰安婦をめぐる問題で韓国が国際法違反の状態を早期に是正するよう求めたが、鄭外相は韓国側の立場を改めて主張。「日本の正しい歴史認識なくして過去の問題は解決できない」と反論した。

 韓国の元徴用工訴訟で日本企業に賠償を命じた判決は、戦時中の請求権問題の「最終的解決」を明記した1965年の日韓請求権協定に違反するものだ。また、元慰安婦への賠償を日本政府に命じた判決は、主権国家は外国の裁判管轄権に服さないという国際慣習法の原則に反している。

 韓国の文在寅政権は、支持基盤の左派勢力のために反日姿勢を示してきた。しかし4月のソウル、釜山両市長選で与党候補が大敗し、文政権のレームダック(死に体)化が進んでいる。ここで日本との関係改善に動けば、左派勢力からの支持も失いかねず、日韓関係修復の糸口は見えない。

文氏は北に利用されるな

 こうした日韓の対立は、北朝鮮にとってはありがたいことだろう。北朝鮮に融和的な文政権は、日米韓の連携にくさびを打ち込む上で好都合な存在だと言える。文政権は北朝鮮に利用されることがあってはなるまい。