「慰安婦」解決を妨害か 韓国女性団体

日本賠償判決へ判事に圧力

 いわゆる従軍慰安婦問題の解決が一向に進まない背景に女性団体の妨害活動があるという主張が韓国で公然となされ始めた。団体の幹部たちは問題解決を心底願っているのではなく、むしろ遅らせることで自分たちの出世やカネ儲けに利用しているという。
(ソウル・上田勇実、写真も)

日韓合意認めた文氏を非難
出世やカネ儲けに問題利用

 慰安婦問題で日本非難の急先鋒に立ち続ける市民団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)は先週、文在寅大統領が新年記者会見で同問題をめぐり言及した内容を非難する声明を出した。

在ソウル日本大使館前に違法設置された「慰安婦像」。慰安婦問題をめぐる反日集会の拠点になっている(2019年12月撮影)

在ソウル日本大使館前に違法設置された「慰安婦像」。慰安婦問題をめぐる反日集会の拠点になっている(2019年12月撮影)

 関連訴訟で日本政府に初めて損賠賠償が命じられた先月の判決に文氏が「困惑した」と述べたことについて、「ショックを通り越し惨憺(さんたん)たる思いだ」とし、「これ以上右顧左眄(うこさべん)しないよう願う」として判決を支持するよう促した。

 また文氏が2015年の日韓慰安婦合意について「公式の合意だという事実を認める」と言ったことにも「その根拠と意味を明らかにせよ」と噛みついた。

 これまで味方と思ってきた文氏の口から「慰安婦」解決を願う趣旨の発言が飛び出したことに驚きを隠せない様子だ。

 正義連の前身、挺身隊問題対策協議会(挺対協)のルーツは韓国最大の女性団体「韓国女性団体連合」にあると言われる。同連合は韓国で民主化運動が起こった1987年に発足して以降、民族統一を中心とする革新的理念を標榜(ひょうぼう)し、特に幹部たちの政界進出の母体となってきた。

 30年以上、女性運動に従事したというある元活動家は、韓国紙とのインタビューで「これまで11人の同連合出身者が首相、閣僚、国会議員になった。彼女たちはフェミニズム運動を出世とカネ儲(もう)けの手段にし、底辺で活動する女性運動家を顧みなかった」と述べた。

 また正義連が表向きには元慰安婦支援を謳(うた)いながら、その裏で政府の助成金や募金などを多額に横領していた疑惑などが浮上していることと関連し、「慰安婦活動はまるで巨大産業。慰安婦問題が本当に解決されたら正義連の存在価値は消える」と語っている。

 仮に文政権下で日韓合意が「公式合意」となれば問題は解決に向かい、韓国で慰安婦支援運動を続けにくくなる――。正義連はそんな焦りを抱いたのかもしれない。

 日本政府への賠償判決をめぐっては、女性団体から圧力がかけられたという見方もある。

 保守系市民団体「反日銅像真実究明共同委員会」の崔徳孝代表は「女性団体のメンバーたちが裁判所の前で事件担当の判事の名前を挙げながら有罪判決を下すようデモをした。判事は自分がまるで加害者であるような錯覚を覚え、心理的圧力を強く感じる。この種の裁判で韓国法廷は被害者中心主義に毒されてしまった」と指摘した。

 国家は他国の裁判権に服さないという「主権免除」の原則から、当初は韓国の関係者の間でも有罪判決になる可能性は低いとの見方が多かったという。仮に女性団体の圧力が判決を覆したとすれば問題は深刻だ。

 野田佳彦政権と李明博政権が12年に合意を目指した慰安婦問題の妥結策について、当時の韓国政府高官が挺対協の元常任代表で慰安婦団体の実質的トップを長く務めた与党「共に民主党」の尹美香議員に説明したところ、尹氏の反応は「問題が解決されては非常に困るという表情だった」(同高官)という。

 尹氏は昨年、自称元慰安婦の李容洙さんが告発したことを機に寄付金の私的流用や自宅マンション購入資金の不透明な出処などさまざまな疑惑が浮上し、業務上横領など六つの容疑で在宅起訴された。だが、現在も国会議員として活動している。

 「慰安婦を利用する慰安婦運動」(韓国紙・朝鮮日報)で出世とカネ稼ぎをする女性運動家の歪んだ姿に韓国内から批判が挙がり始めている。