韓国 文政権また中国寄り姿勢

先駆け武漢直行便再開

 韓国の男性人気音楽グループ「BTS(防弾少年団)」が朝鮮戦争(1950~53年)で米韓両国が協力した歴史に言及し、これに中国が反発した問題で、中国の不遜な態度に批判が集まる一方、韓国の文在寅政権は逆に中国寄りともいえる言動を繰り返している。米中覇権争いの狭間で文氏の親中ぶりが改めて浮き彫りになった。
(ソウル・上田勇実)

BTSの朝鮮戦争発言で
駐米大使「米選ぶと限らぬ」

 BTSは今月7日、米韓関係の発展に貢献したとして米非営利団体「コリア・ソサエティー」から表彰を受けた際、メンバーの一人が今年は戦争勃発70年の大きな節目であることに触れながら、「(米韓)両国が共に経験した苦痛の歴史をずっと忘れない」と述べた。

2019年12月31日、米ニューヨークのタイムズスクエアで歌を披露する韓国の人気音楽グループ「BTS(防弾少年団)」(UPI)

2019年12月31日、米ニューヨークのタイムズスクエアで歌を披露する韓国の人気音楽グループ「BTS(防弾少年団)」(UPI)

 周知のように朝鮮戦争は北朝鮮が突然、韓国側に武力侵攻して始まり、その後、中国が北朝鮮に大量の援軍を送ったことで、韓国は窮地に立たされた。しかし米国を中心とする国連軍の参戦により、最終的に朝鮮半島を横断する北緯38度線付近を軍事境界線として休戦協定が結ばれ、今日に至っている。

 韓国が自由民主主義国家かつ経済発展国として国際的地位を高められたのは、戦争当時の米国の協力なしにはあり得なかった。平和と安全、豊かさを享受する現代韓国人の一人として当時の米韓協力の意義を噛み締めたBTSの発言は至極当然と言えよう。

 ところが、この発言について中国のSNS上で「中国の犠牲を無視している」「中国市場から出て行け」などとBTS批判が拡散したことに対し、政府・与党は沈黙するか擁護する姿勢だ。

 保守系の最大野党・国民の力の金●(「火へん」に「玄」)我・非常対策委員は、自身のSNSで「政治的、商業的に利用価値があるときは親しいふりをするのに、こういう困った状況にぶつかると青瓦台(大統領府)は沈黙する」などと批判した。

 文氏は先月、今年から政府公式記念日に制定した「青年の日」の行事を青瓦台で行い、BTSを招待したばかりだった。この時、青瓦台はBTS招待の意義を「わが国発展のため、どの瞬間にもその役割を果たした青年たちと疎通することで青年問題を解決しようという政府の意志を込めたもの」と説明していた。

 また与党・共に民主党の申東根・最高委員は、党の最高委員会議で「大衆に名前が知られた人たちの発言が民族的プライドや歴史的な傷を刺激すれば、社会問題に発展する」と述べ、物議を醸した。中国のプライドを擁護したからだ。

 こうした中、李秀赫・駐米大使は12日、リモートで参加した国会の国政監査で「70年前に韓国が米国を選んだので、今後70年間も米国を選ばなければならないわけではない」と述べ、波紋を広げた。

 これについて大手紙朝鮮日報は「韓国安保の最後の砦(とりで)が米国との同盟以外にあるのか」と指摘。「朝鮮半島を自分の属国と考え、歴史的に地域覇権を追求しなかったことがなく、暴力的外交政策を推進する共産党一党独裁国家である中国を米国と天秤に掛けてどちらか一方を選ぶことができると思うのは、節操のない(左翼)運動をする学生くらいなもの」と痛烈に批判している。

 韓国政府は先月、新型コロナウイルスの発生源とみられている中国・武漢と韓国・仁川との直行便を世界に先駆け再開した。これも中国政府の顔色をうかがった措置ではないかという見方が出ている。

 一部の韓国世論は「感染防止のため秋夕(旧暦8月15日)連休に地方の実家などを訪れるのを自制するよう呼び掛けておきながら、一方で中国との直行便を再開させるのか」と不快感を露わにしている。