新START 中国の参加なければ時代遅れ


 米国とロシアはウィーンで核軍縮に関する高官協議を行い、来年2月に期限切れとなる新戦略兵器削減条約(新START)延長などを議論したが、招待した中国は参加しなかった。軍拡を続ける中国が加わらず、米露だけ相互検証可能な条約の枠組みは時代遅れとなりかねない。

徐々に核弾頭増やす中国

 中国が持つ核弾頭数について、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は今年1月時点で320発と推計している。世界の総数1万3400発のうち米露が約9割を占めるのに比べて少ないが、中国は長期にわたって徐々に核弾頭を増やしている。

 核装備の近代化も進め、核弾頭数推計240発だった2015年には、核兵器を担当する第2砲兵部隊をロケット軍に改組し、人民解放軍の中核に位置付けた。昨年の中国建国70周年軍事パレードで射程1万5000㌔とされる大陸間弾道ミサイル(ICBM)DF41が初公開されるなど、核兵器運搬手段の技術力は著しく進歩している。

 公表された中国の19年度国防予算は20兆円以上で、冷戦が終結した1989年度から48倍に膨れ上がった。領土領海をめぐる周辺地域への覇権主義的な振る舞い、増大の一途の軍事予算などを踏まえれば、米国に対し際限のない軍拡競争に挑む可能性がある。

 リャプコフ露外務次官との協議に先立ってビリングスリー米大統領特使は中国も招待したことを明らかにし、テーブルに中国席も用意した。中国の不参加に同氏はツイッターで不透明な核開発をいぶかった。中国は3カ国の枠組みを拒否しているが、条約で抑制されない軍事力増強の行方が懸念される。

 米露は2011年に発効した新START目標を、達成期限の18年2月までに達成。戦略核弾頭の配備数を1550発、ICBMや爆撃機など核兵器の運搬手段の総数を800までに削減した。

 同条約締結当初、ロシアは米国のミサイル防衛(MD)網が核戦力を左右するとみて警戒した。このため、米国の対露MD網構築の動きに条約破棄の対抗姿勢を示す一方、新型兵器の開発を進め、条約目標達成後の18年3月にプーチン大統領が年次教書演説の中でMD網を突破する長距離極超音速ミサイル「アバンガルド」など六つの新型兵器を発表した。

 昨年12月の米露外相会談ではロシアが条約延長を主張し、逆に米国は協議に中国を加え、新型兵器を含め軍縮対象を広げようと仕切り直しを図った。

 同条約はリベラルで核廃絶を目指したオバマ前米大統領と、ロシア双頭体制時のメドベージェフ前大統領が進めたものだ。オバマ氏の核政策に批判的なトランプ米政権は、18年の「核態勢の見直し」(NPR)で米国の核態勢強化を打ち出している。

交渉テーブルに着かせよ

 米中“新冷戦時代”の軍拡競争は歓迎できない。米国と旧ソ連が強大な核戦力を持った冷戦時代の産物であるSTARTの2国間枠組みが通用しなくなりつつある現実は明らかだ。中国がテーブルに着くよう国際社会は連携すべきだ。

(サムネイル画像:Wikipediaより)