尖閣の字名変更 政府は実効支配を強化せよ


 沖縄県石垣市議会が、同市に属する尖閣諸島の字名を10月1日に「登野城(とのしろ)」から「登野城尖閣」に変更する議案を賛成多数で可決した。
 尖閣周辺では中国海警船の動きが活発化している。字名変更を機に、政府は尖閣の実効支配を強化すべきだ。

中国が「断固反対」と非難

 中山義隆市長は字名変更について、石垣島中心部にある同じ字名の区域との違いを明確にして行政事務を効率化するためのもので「政治的な意図はない」と述べている。ただ、尖閣の住所が「字登野城」から「字登野城尖閣」と変わることで、尖閣が日本領土であることが一層はっきりすることは確かだ。

 字名変更に関し、中国外務省の趙立堅副報道局長は「中国の領土主権に対する重大な挑発だ。断固反対する」と非難。「違法で無効であり、釣魚島(尖閣の中国名)が中国に属するという事実を変えることはできない」と強く反発した。

 変えることができないのは、尖閣が日本固有の領土だという事実である。日本は1895年に尖閣を沖縄県に編入した。一方、中国が領有権を主張するようになったのは、国連の報告書で東シナ海に石油埋蔵の可能性があることが指摘された後の1971年以降だ。日本は中国に、このことを繰り返し突き付けていく必要がある。

 中国は対抗措置として、東シナ海の海底地形に釣魚島を示す名称を付ける暴挙に出た。尖閣沖の接続水域では74日連続で中国海警船が確認され、2012年9月の尖閣国有化以降、最長の連続日数を更新した。今年5月には尖閣沖の領海に海警船が侵入して日本漁船を追尾した事案も生じるなど、中国は尖閣周辺で活動を活発化させている。

 中国の習近平政権は、日本の海上保安庁に当たる海警局が戦時には軍の指揮下で任務に当たることを定める法改正に乗り出した。改正されれば、中国側が尖閣周辺が戦時に入ったと判断した場合、海警船が海軍艦艇と共同作戦を行うことも可能となる。海警局のトップには既に海軍少将が就任しており、軍事的な性格が強まっている。

 このところ尖閣沖を航行している海警船の中には、大口径の砲のようなものを備えている船もある。わが国は中国の尖閣侵攻に実効的に対処できる法整備を急がなければならない。

 米国は尖閣が米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象であるとの立場を取っている。このことが中国に対し、大きな抑止効果を発揮している。

 同条約は今月で発効から60年を迎えた。日米同盟を深化させていくことも尖閣防衛には欠かせない。

 今回の字名変更は、尖閣の実効支配強化に資するものだ。政府は尖閣での公務員常駐や荒天時などに漁船の避難場所となる「船だまり」の整備も進める必要がある。

習氏の国賓来日中止を

 自民党の保守派は、延期された習国家主席の国賓来日を中止するよう求めている。中国が尖閣周辺で挑発を強める現状で、習氏を国賓として迎えることは難しいのではないか。