GSOMIA延長、日米韓連携を強化する契機に


日米に阻まれ方針転換

 韓国が8月に協定破棄を宣言して以降、日本と米国は破棄撤回を強く求めてきた。仮に破棄された場合、核弾頭を搭載した北朝鮮の各種弾道ミサイルが発射されるケースなど有事での情報収集力が低下し、深刻な事態を招きかねないためだ。

 韓国は協定を破棄しても米国を介する日米韓情報共有協定(TISA)で十分対応できると説明してきたが、一刻を争う事態への対応や米国の負担増加などから破棄によるデメリットを懸念する声が根強かった。

 韓国は協定破棄を宣言することで日本に圧力をかけようとした。戦略物資をめぐる日本の対韓輸出運用見直しや輸出優遇対象国からの除外を、韓国大法院(最高裁)の徴用工判決に対する日本の「経済報復」とみなし、その撤回が協定延長の前提条件だと主張し続けた。

 結局、経済と安保という全く別次元の問題を結び付ける無理を押し通そうとしたことに日本は最後まで応じず、米国からは逆に協定の戦略的価値を訴えられるなど日米の毅然(きぜん)とした態度に阻まれ、方針転換を余儀なくされる格好となった。

 韓国は協定破棄が地域安保にどれほど深刻な悪影響を及ぼすかにもっと目を向けるべきだ。自前の偵察衛星によるリアルタイムの監視体制などを備えない韓国にとって、日米との連携は不可欠なはずだ。連携を疎(おろそ)かにすれば北朝鮮や中国を利するだけである。

 協定破棄は米韓同盟を揺るがしかねない。米国が韓国の戦略的価値を見いだせなくなるからだ。さらに駐留経費の分担交渉が決裂した場合、在韓米軍の縮小・撤退などにつながる恐れもある。そうなれば取り返しのつかないことになる。

 協定破棄を日本の「経済制裁」とリンクさせた対日カードとして使ったことは、韓国内の支持層向けには受けが良かったかもしれないが、国内政治のために安保を犠牲にすることも厭わない国として国際社会ではイメージダウンにつながりかねない。

 韓国は協定延長を日米韓3カ国の連携をさらに強化させる契機にすべきだ。延長を日本への譲歩だとして反発する世論もあり、来年4月に総選挙を控えることから文在寅政権の舵(かじ)取りが難しくなったとの見方もある。

 だからと言って今回、日韓両政府の折衝で合意した対韓輸出運用見直しをめぐる協議再開で、主導権を握ろうとまた協定破棄をちらつかせるような揺さぶりはすべきでない。安保の重要懸案を国内政治と絡める過ちは二度と犯してはなるまい。

善見えぬ日韓関係

 残念ながら協定延長でも、冷え込んでいる日韓関係に改善の兆しが見えたわけではない。文政権にはいま一度、徴用工判決の問題に向き合って事態打開に乗り出すことを促したい。