仏大統領がEUの牽引役として奔走
G7、ロシアがイラン問題で手腕
フランス南西部のビアリッツで開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)は26日、3日間の日程を終え、閉幕。米中貿易摩擦が激化する中、自由貿易の在り方をめぐる対立や地球温暖化対策などへの対応で、参加国首脳の意見の隔たりが大きく、「首脳宣言」の採択は見送られた。
「首脳宣言」が採択されなかったのは、1975年にフランスで第1回の首脳会議が行われて以来、初めて。東西冷戦終結後はロシアも加わり、G8だった時期もあったが、ウクライナ、クリミア問題でロシアは排除された。同時に中国やインドが台頭する中、より世界の現実に則した世界経済を話し合う20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が2008年からスタートした。G7の影響低下も指摘されている。
マクロン大統領は、サミット前にロシアのプーチン大統領を南フランスの大統領別荘に招き、ウクライナ問題やイラン問題を話し合い、会期初日にはロシアのサミット復帰も議題に挙げた。イランの核開発問題では、7カ国がイランの核保有を認めない点で一致した一方、マクロン氏は、25日にサミット会場にサプライズ訪問したイランのザリフ外相と会談し、イランへのアプローチの米国との違いを鮮明にした。
英国の欧州連合(EU)離脱を直前に控え、ドイツでは景気減速に見舞われている。多国間主義のマクロン氏だが、トランプ氏の2国間交渉には反対しているものの両者の対立は表面化しなかった。ロシア、イラン問題でも外交手腕を見せ、EUの牽引(けんいん)役として存在感を示すことに奔走した。
「首脳宣言」が採択できず、具体的な大きな成果は期待できないとされたG7で、議長国として何らかの成果の欲しかったマクロン氏。フランス・メディアによれば、非常に難しい世界情勢の中、一定に指導力を発揮したとの評価も出ている。
(パリ 安倍雅信)