ウクライナの新大統領は欧米との結束を


 4月のウクライナ大統領選で当選したコメディー俳優のウォロディミル・ゼレンスキー氏が大統領に就任した。

 ゼレンスキー氏は大統領選決選投票で73%を得票して圧勝した。既存政治家への不満が高まる中、国民は政治経験のないゼレンスキー氏の清新さに大きな期待を寄せたのだろう。

最大の課題は対露関係

 最大の課題はロシアとの関係だ。ロシアは2014年3月、ウクライナ南部クリミア半島を併合した。

 クリミアにロシア系住民が多いのは事実だが、他国の領土を一方的に併合することは決して許されない。欧米がロシアに経済制裁を科しているのは当然のことである。

 このほかロシアは、ウクライナ東部における政府軍と親露派との戦闘に軍事介入するなど、ウクライナの主権や領土を侵害する動きを続けている。昨年11月にロシアがクリミア近海でウクライナ艦船3隻を拿捕(だほ)した問題では、乗組員の拘束が続いている。国際社会はウクライナ新政権を支え、ロシアに毅然(きぜん)とした姿勢で臨むべきだ。

 ゼレンスキー氏は欧州統合路線を取るが、ポロシェンコ前大統領が対露強硬姿勢を前面に出していたのに対し、対露批判は抑えてきた。就任演説では「第一の課題はドンバス(ウクライナ東部)の停戦だ」と強調し、これ以上の犠牲者が出ないよう「全力を尽くす覚悟がある」と宣言。停戦に向け、ロシアと「対話の用意がある」と述べた。

 しかしロシアのプーチン大統領は先月、ウクライナ東部の親露派住民のロシア国籍取得を簡素化する大統領令に署名するなど、早くもゼレンスキー氏を揺さぶる動きを見せている。こうしたロシアの態度を見る限り、対話でウクライナ東部の危機を克服できるのか疑問が残る。欧米では、ゼレンスキー氏の対露姿勢への懸念もくすぶっているようだ。ゼレンスキー氏はロシアとの対話の前に欧米との結束を固める必要がある。

 欧州とロシアに挟まれたウクライナの状況は国際情勢を左右する。ウクライナの安定化に向け、ゼレンスキー氏の手腕が問われる。

 一方、プーチン大統領の支持率はクリミア併合直後には8割台に上昇したが、昨年末には6割台まで下がった。併合による熱狂は冷めている。ロシアは国連安全保障理事会常任理事国であり、地域の大国である。責任ある行動を取れないのであれば、国際社会で孤立を深めるだけだろう。

安定と繁栄に尽力を

 ゼレンスキー氏は就任演説で「最高会議(議会)を解散する」と表明した。ゼレンスキー氏は議会に支持基盤を持っていないため、10月実施予定の議会選を前倒しして政権基盤を固めることを狙っているのだろう。

 ウクライナでは04年の「オレンジ革命」で政権を握った親欧米派が、激しい主導権争いを繰り広げて国民の信頼を失った。ポロシェンコ前大統領は政府の汚職体質を改善できなかった。ゼレンスキー氏はかつての為政者を反面教師とし、ウクライナの安定と繁栄のために尽力する必要がある。