EU 英離脱案を承認
大使級会合 英の閣議承認を受け
英国政府の内閣が14日、欧州連合(EU)離脱協定案を承認したことを受け、EUのバルニエ主席交渉官は「秩序ある離脱に向けて極めて重要な一歩になった」と評価し、EU側も同日、大使級会合を開いて協定案を承認した。
バルニエ氏は「草案は厳密で詳細な内容であり、離脱で生じる影響の全ての問題で、あらゆる当事者に法的な確実性を提供するものだ」と強調した。バルニエ氏は加盟各国に協定草案を提示し、全加盟国は25日の臨時首脳会議までに問題がないか精査するが、時間は限られている。
離脱協定の合意は、欧州議会の承認が必要なため、バルニエ氏が欧州議会に説明を行う。同氏は「英国との野心的で持続的なパートナーシップを築くのは容易ではない」と述べる一方、英国は「EUの友人であり、パートナー、同盟国であり続ける」と述べ、難航が予想される英国の議会承認に期待を示した。
焦点となる英領北アイルランドとアイルランドの国境問題は、草案では、来年3月の離脱後の移行期間も協議を続け、2020年までに解決策が見いだせなければ、英国は引き続き、EUの関税同盟にとどまるとしている。関税管理の税関(ハード・ボーダー)をつくりたくない英国側の意向にEUが沿った形だ。
今回、英閣僚が承認した草案に対して、メイ政権に閣外協力しているアイルランドの民主統一党は強く反発しており、英与党内での離脱強硬派も、関税同盟に残留すればEUの規則に従い続けることになると批判している。
一方、EU側は、英国在住のEU市民の身分が保障されることは歓迎しつつも、離脱で欧州本部をEU域内に移動する企業が続出した場合、英国内で仕事を失う可能性を懸念している。さらに離脱直後の混乱に対する十分な対処の準備ができていないことにも不安が広がっている。
また、テロなどの治安対策でEUは、これまで同様の情報共有ができるかや、欧州裁判所が管轄するEUレベルの司法が、英国との間でどう機能するのかも不透明なものが多いと指摘されている。
将来のEUと英国の通商関係の協議は移行期間にも継続する流れにある。合意に達しない場合、1回の移行期間の延長も可能としているが、バルニエ交渉官は、期間は「限定的だ」との考えを示している。
(パリ安倍雅信)