トルコ大統領選、エルドアン氏続投
52%得票、議会も過半数
トルコで24日、大統領選が行われ、エルドアン大統領の続投が決まった。同時に行われた総選挙(一院制、定数600)でも、与党が過半数を制した。エルドアン大統領は同日深夜(日本時間25日早朝)、「国民から大統領の任務を託された。新たな出発だ」と勝利宣言した。
課題は国家の分断修復
トルコは、今回の選挙後、1923年建国以来の議院内閣制から、大統領に権限が集中する大統領制に全面移行する。首相時代も含め約15年間、国を率いてきたエルドアン氏による政権継続を国民は選択、任期は5年2期までで、エルドアン氏は異例の長期強権政権を築くことになる。
6人の候補者で戦った大統領選は、現職のエルドアン氏が得票率52・5%と過半数を制した。野党が目指していたエルドアン氏の過半数割れによる決選投票に持ち込むことはできなかった。議会でもエルドアン氏率いる親イスラム政党の公正発展党(AKP)の得票率が43%、AKPと連携する民族主義者行動党(MHP)が11%を獲得して過半数を制し、懸念されていた政府と国会の「ねじれ現象」は回避された。野党第1党の中道左派・共和人民党(CHP)は23%だった。
エルドアン大統領は、2位の野党候補インジェ氏(得票率31・7%)を大きく引き離したものの、当選ラインの50%を辛うじて超える薄氷の勝利だった。
2年前のクーデター未遂事件後に解雇された公務員や軍人は11万人、逮捕・拘束者は15万人を超える。
世論はエルドアン支持派と都市部を中心とした反対派の間で深く分断され、強権統治への不満がくすぶっていることを鮮明に映し出した選挙となった。とりわけ通貨リラの暴落で、輸入に頼るトラクターの燃料や肥料などが高騰し、農村を直撃。地方の反エルドアン勢力を勢いづかせた。
こうした亀裂を、エルドアン氏がどう修復していくのか大きな課題だ。
エルドアン支持の主要な根拠は、経済成長の実感だった。エルドアン政権で道路や鉄道などインフラが整備され、所得も増加した。モスク(イスラム礼拝所)も増えた。
意思決定が早く傾斜投資できる開発独裁は、経済の初期では効力を発揮するが、多様なニーズをくみ上げることに難があり「中進国の罠(わな)」に陥りやすい。
強権統治の「剣」は万能ではなく、柔軟な政策をエルドアン大統領率いる新政権が取れるか。15年間、トルコ政治のトップに君臨してきたエルドアン大統領が、建国の父・アタチュルク初代大統領に並び立つことができるかどうか正念場となる。
(イスタンブール池永達夫)