スペインの凶行、国際連携でテロを封じ込めよ


 また、卑劣なテロが欧州で発生した。スペイン東部バルセロナ中心部の繁華街で、車両が群衆に突入して100人以上が死傷した。

 車が暴走した「ランブラス通り」は観光のメインスポットだ。被害者の国籍はスペインや近隣諸国など24に上る。無辜(むこ)の人たちを突然襲撃し、殺傷するという言語道断の凶行である。

同種の事件が欧州で続発

 バルセロナから南西に約120㌔離れたカンブリスでも、海岸沿いの歩道で車が通行人に突っ込み、市民6人と警官1人が負傷。その後、犯人5人が警官に射殺された。バルセロナの事件との関連の有無はまだ分かっていないが、当局はイスラム過激派による組織的な犯行という見方を強めている。

 バルセロナの事件では、犯行に使われた車両をレンタルしたとみられるモロッコ国籍の男ら容疑者3人が逮捕された。しかし、実行犯は逃走中だ。早急に逮捕し、両事件の関連も含めて徹底的に解明することが求められる。

 過激派組織「イスラム国」(IS)はバルセロナの事件を受け、系列メディアを通じて犯行を主張する声明を発表した。実際にISが起こしたものかどうかは不明だが、ISによるテロの脅威は高まっている。

 その背景には、イラクやシリアでの支配地域の縮小がある。活動拠点だったイラク北部モスルは7月、イラク軍に奪還され、ISが「首都」と位置付けるシリア北部ラッカも、市街地の半分がクルド人主体の民兵組織によって制圧された。

 こうした中、ISの戦闘員は中央アジアや東南アジアなどに流入している。イスラム教徒が世界最多のインドネシアでIS支持者によるテロが頻発しているほか、政情不安に悩まされているフィリピン南部でもISの活動が活発化している。組織としてのISが弱体化しても、テロへの警戒は怠れない。

 スペインでは2004年3月にマドリードで191人が死亡した列車同時爆破テロが発生したが、近年は大規模なテロは生じていなかった。だが、北アフリカなどからは今年に入って9000人以上の移民・難民が押し寄せてきている。このため、移民や難民に偽装したテロリストが流入する恐れがあると指摘されていた。

 欧州では昨年以降、車を使ったテロが続発している。16年7月にはフランス南部ニースで、チュニジア人の男が大型トラックを暴走させて86人が死亡。12月にはドイツ・ベルリンで、トラックがクリスマス市に突っ込んで12人が犠牲となった。今年に入ってからは、英ロンドンで同様のテロが相次いだ。いずれも一般利用が多い「ソフトターゲット」を狙ったものだ。

決して人ごとではない

 卑劣なテロを許してはならない。国際社会はテロ封じ込めへ連携を強化する必要がある。安倍晋三首相は、スペインのラホイ首相へのお見舞いのメッセージで「日本は国際社会と手を携えてテロと断固として闘う決意だ」と表明した。20年東京五輪・パラリンピックを控える日本にとって、テロは決して人ごとではないことを銘記すべきだ。