ロンドンのテロ、抑止への戦いを継続せよ


 英ロンドン中心部のロンドン橋でワゴン車が歩道を暴走して通行人をはねたほか、車に乗っていた男3人が近くの食品市場で人々を刃物で襲撃して7人が死亡、48人が負傷して病院に搬送された。

 英国では今年に入ってテロが連続して起きている。無辜(むこ)の人々を殺傷するテロを決して許すことはできない。英国そして国際社会はテロ抑止への戦いを継続する必要がある。

 中心部で7人が死亡

 突然の襲撃で、週末の夜のにぎやかな繁華街はパニック状態に陥った。実行犯3人は警官に射殺されたが、当局はほかに12人を拘束した。事件の全容解明が急がれる。

 英国では先月、中部マンチェスターで自爆テロが発生し、22人が犠牲となったばかりだ。ロンドンでも3月、国会議事堂近くで男が車で歩行者をはね、警官を襲って5人が死亡するテロが起きている。

 マンチェスターの事件では、実行犯が過激派組織「イスラム国」(IS)に加わっていたとされる。今回はISとの関連があるかまだ分かっていないが、欧州ではISがインターネットで拡散させる過激思想に傾倒して凶行に踏み切る「ホームグロウン(国産)テロ」の脅威が高まっている。背景には、欧州で生まれ育った貧しい移民出身層が、所得格差拡大などに強い不満を抱いていることがある。

 今回のようなテロの場合、実行者が少数で特別な武器も使わないため、未然に把握・防止するのは簡単ではない。だが、指をくわえてテロが起きるのを待っているわけにはいかない。危険人物の情報収集や過激思想の拡散防止の強化など、テロ抑止に向けてあらゆる対策を進めるべきだ。

 テロではないが、日本でも今回のような無差別殺傷事件はすでに起きている。2008年6月に東京・JR秋葉原駅近くの路上で、トラックが人をはね、降りてきた男がナイフで次々と通行人らを刺して7人が死亡した。日本で同じ手法のテロが発生しないとは言い切れない。その意味で、今回の事件は日本にとっても人ごとではない。

 英国のメイ首相も参加した先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)では、マンチェスターの事件を受けて「あらゆるテロを可能な限り最も強い表現で非難する」とする共同声明を発表した。国際社会は連携を一層深めて卑劣なテロとの戦いを継続し、封じ込めに全力を挙げなければならない。

 「準備罪」新設は不可欠

 国会で現在審議中の「テロ等準備罪」法案は、テロなどの組織犯罪に関して準備段階での検挙を可能にするものだ。法案成立は国際組織犯罪防止条約締結のための条件でもあり、日本が国際社会と共にテロと戦う上で不可欠だと言える。民進、共産両党などは廃案を訴えているが、国民の安全のための法案を政権批判に利用するのはやめるべきだ。

 日本では、北朝鮮工作員が化学・生物兵器によるテロを行う可能性も指摘されている。スパイ防止法の制定や本格的な情報機関の創設など、一層の対策強化も検討する必要がある。