伊外科医ストラダ氏死去、対テロ戦争現場で人道貫く
米同時テロから20年、アフガニスタンからの米軍撤退が進行し、タリバンが首都カブールを制圧する直前の8月13日、対テロ戦争の舞台となったアフガン、イラクなど紛争地帯で広く人道支援を行ってきたイタリアの外科医ジーノ・ストラダ氏が、フランスのノルマンディー地方のオンフルールで亡くなった。73歳だった。
ストラダ氏は1994年に人道支援組織「エマージェンシー」を設立し、アフリカの難民や戦争犠牲者らに無償治療を施してきた。「エマージェンシー」は19カ国で60以上の緊急医療施設を運営。1100万人以上に治療を施してきた。
「医療を受ける権利」を基本的人権と位置付けるストラダ氏は2004年、イラクで米紙とのインタビューに答え、「患者がアラブ人か、クルド人か、スンニ派か、シーア派かとは聞かない。何を今しなければならないかだけに集中した」と語っている。なお、「エマージェンシー」は昨年、「ピープルズ・ワクチン」キャンペーンに参加し、全ての人に無料で新型コロナウイルスワクチンが提供できるように働き掛けている。
同氏は、世界平和や紛争解決、環境保全などに貢献した個人や団体を表彰する「鮮鶴(ソンハク)平和賞」の第2回受賞者。
17年2月3日、ソウルのホテルで開かれた授賞式で同氏は「欧州は受け入れや統合プログラムを強化せず、支援金を支払うことと引き換えに難民を母国に引き返させている」と述べ、欧州の移民政策を批判するなど、難民救済問題で献身的な姿勢を貫いてきた。
「鮮鶴平和賞」選考委員長の洪一植・元高麗大学総長は、ストラダ氏について「紛争国の人々に28年間、内科・外科治療を提供してきた卓越した人道主義者だ」と称賛していた。
(ウィーン・小川 敏)