対中制裁 EU、人権で米と協調
経済協定足踏み 警戒感形に
欧州連合(EU)が22日の外相理事会で、中国国内でイスラム系少数民族ウイグル族への不当な扱いが人権侵害に当たるとして発表した約30年ぶりの対中制裁は、アラスカでの米中外相会談を終えたブリンケン米国務長官が同日から初めて欧州を訪問するのに合わせて、協調姿勢を示したものだ。
だが、中国は即座に報復として、欧州の個人・団体に対する制裁を発表した。これに対しボレル外交安全保障上級代表(外相)は同日の記者会見で、「残念で受け入れ難い」と批判した。
EUが中国に制裁措置を取るのは、1989年の天安門事件以来で、制裁はEU内の資産凍結や域内への渡航禁止が含まれる。制裁対象は、新疆ウイグル自治区の幹部ら中国共産党当局者4人と1団体としている。また、イスラム系ウイグル族が不当に拘束され、収容所に強制収容されているほか、収容所での強制労働やウイグル族の女性に不妊手術を強制している明白な証拠があるとして、制裁は正当なものとしている。
ドイツを中心に近年、中国との経済関係を深めるEUは、昨年12月末、アメリカの制止を振り切る形でEU・中国間の投資協定を大枠で認める署名を行った。昨年夏、中国の王毅外相が欧州を訪問した際、各地で香港への国家安全維持法施行やウイグル族弾圧、台湾への圧力を批判されたが、王氏は「内政問題だ」と繰り返した。既に中国への逆風が吹き始めていたが、独出身のフォンデアライエン欧州委員会委員長は人権弾圧への明確なメッセージを出すのに躊躇(ちゅうちょ)し、背景にはドイツがブレーキをかけたと言われた。
(パリ 安倍雅信)