伊首相、コロナ批判で辞表提出
新型コロナウイルスの感染拡大で多数の死者を出しているイタリアのジュゼッペ・コンテ首相は、コロナ対策での国民の批判を受けて26日、大統領府に辞表を提出した。連立与党の勢力が過半数を割り込んだ上院(定数321)の今週の採決で敗北を回避するため、いったん辞任し新政権を首班として発足させることを目指すとされる。
イタリアでは昨年2月からの感染累計死亡者数が25日時点で約8万5881人に上る。レンツィ元首相率いる小政党「イタリア・ビバ」の離脱に伴い、コンテ首相率いる連立与党は上院で過半数を失い、少数与党となっている。関係筋によれば、連立与党の最大勢力、新興左派「五つ星運動」と中道左派の民主党の議員らがコンテ首相に辞職を求めていたという。
コンテ首相は今、辞任しなければ、他の人物が首相を代行した上、総選挙になる可能性もあり、コロナ禍で政局は一気に混乱する可能性がある。内閣府は声明で、コンテ氏が辞任の意思を25日に閣僚に伝え、26日にマッタレッラ大統領に会って辞表を提出することを明らかにした。政治危機の原因にはコロナ対策の支出をめぐる議論もあった。
コンテ首相は、コロナ対策に欧州連合(EU)の復興基金からの209億ユーロを含め、約750億ユーロの予算を充てることを表明した。そのため、ポピュリズム政党の五つ星運動は、コンテ氏の側にとどまることを明言している。
コンテ氏は過去には極右のサルビーニ氏率いる北部同盟と五つ星運動の連立を率いたこともあり、その後は五つ星運動と民主党で主に構成される中道左派連合を率いてきた。イタリアは、新型コロナの感染拡大で多数の死者を出し、戦後最悪ともいえる経済危機に直面している。
コンテ首相はかねてより、この困難な時期に新たな選挙を行い、混乱することは是が非でも回避すべきだと主張してきた。果たしてコンテ氏の目論見(もくろみ)通りにいき、強い政権を樹立できるかは不透明な状況だ。
イタリアのメディアは、コンテ氏は中道派や無所属議員、イタリア・ビバのメンバーのほか、ベルルスコーニ元首相率いる中道右派のフォルツァ・イタリアの議員も含めた幅広い連立工作を行うと予想している。イタリアの制度では首相から辞表を受け取った大統領の権限が大きいため、マッタレッラ大統領の出方が注目される。
(パリ 安倍雅信)