仏、3度目ロックダウンか

 英国発の新型コロナウイルス変異種が猛威を振るうフランスで、3度目のロックダウン(都市封鎖)実施の可能性が高まっている。欧州各国で感染拡大に対する対策強化策が打ち出される中、現在、フランスで実施されている夜間外出禁止措置だけでは感染を抑えられないとの懸念が広がっている。
(パリ・安倍雅信)

英国発の変異種が猛威
ワクチン接種を加速

 ベラン保健相は21日、ジョンソン英首相が英国発の変異種は感染率だけでなく死亡率も高いとの認識を示したことを受けて、民放テレビ、TF1で「今のところはロックダウンを考えていない」としながらも、夜間外出禁止令の瀬戸際にあることを示唆した。

8日、パリの公共施設でワクチン受け入れの準備を進める医療関係者(UPI)

8日、パリの公共施設でワクチン受け入れの準備を進める医療関係者(UPI)

 フランスは昨年10月末から2回目のロックダウンを実施した。その後、解除したものの、目標としていた新規感染者数5000人を達成できず、12月15日から夜間外出禁止令が導入された。

 今年に入り、東部を中心に感染拡大した地域で外出禁止開始時間を午後8時から午後6時に前倒しし、16日からは全土に適応された。ベラン保健相はテレビインタビューで医療用のサージカルマスクまたは布マスクの使用を推奨し、手作りマスクは感染防止効果が低いため使用を避けるよう要請した。

 欧州連合(EU)、英国での感染拡大は深刻化しており、フランスでも22日の直近24時間の新規感染者数は2万2848人と1月3日から上昇が止まらない。さらに22日時点で、集中治療室で治療を受ける患者数は2902人と昨年12月10日以来、最高を記録している。PCR検査の陽性率も22日は7%と12月初旬以来の最高水準だ。

 仏国立保健医学研究所とパスツール研究所は、より感染力の強い英国の変異種によって、感染拡大が今後増加すると予測している。フランスでの今年に入っての感染拡大について保健省は、昨年のクリスマス休暇の24日、25日に夜間外出禁止措置を一時解除したことや、年末年始に多くの国民が家族や友人たちと集まり、密の状態をつくったことが最大の原因と分析している。

 コロナ対策協力に伴う経済対策では、一例として、レストランやカフェに関係する卸売業者、納入業者等のうち、売り上げが70%以上減少している企業は、政府が設けた連帯基金から月20万ユーロ(約2500万円)を上限に2019年の売り上げの20%に相当する額の給付を受けることができるようにしている。

 ワクチン接種に関しては18日、一般市民対象のワクチン接種のキャンペーンが開始された。昨年12月27日からクラスター(集団感染)が認められた高齢者施設の入居者とスタッフ、さらに医療関係者にワクチン接種の対象を広げてきたが、75歳以上の高齢者約500万人と一部の基礎疾患を持つ重症化リスクが高い人80万人に対象を広げた。

 全国833カ所の会場で接種を受けられるようになったが、申し込みが殺到し、予約が困難なケースも急増中と報じられている。22日時点の1回目の接種者は累計で約96万3000人となった。政府は、1月中に130万人、2月末までには240万から400万人のワクチン接種を完了したいとしている。

 フランス公衆衛生局の報告によれば、21年の1週目は前の週に比べて、感染者が全体で30%増加し、特に14歳以下の感染者が46%増加していることが判明した。原因が感染力の強い英国の変異種のせいなのかは分かっていない。感染対策の切り札はワクチンだが、フランスのサノフィ製ワクチンは接種までに少なくとも2カ月かかるとされる。

 世論調査会社IFOPが17日に発表した調査では、国民の54%がワクチン接種を受けたいと回答したとしており、12月時点より15ポイント上昇し、さらに上昇を続けている。

 ところが仏公共テレビ、フランス2では、65歳以上の77%がワクチン接種を希望する一方で、25歳から49歳までの世代では45%にとどまっている。

 感染症専門家は、感染から回復後に長期間後遺症に苦しむ場合があり、現時点ではその症例は世代を問わないとして、若者がワクチン接種に消極的なことを懸念している。英国発の変異ウイルスの感染が確認される中、若い世代の多くがワクチンを接種しなければ、集団免疫効果はないと懸念されている。