変異種拡大で英仏物流停止


新型コロナ 英側にトラック長蛇の列

 新型コロナウイルスの変異種の発見で世界40カ国以上が英国への渡航を停止する中、フランスが20日に英国との国境を48時間閉鎖した結果、英仏海峡を通過する貨物トラックが英ドーバーで足止めされた。その数は21日夜時点で1000台を超え、仏カレーにも運送業者からの問い合わせが殺到している。

21日、英南東部の港町ドーバー周辺で足止めされたトラック(EPA時事)

21日、英南東部の港町ドーバー周辺で足止めされたトラック(EPA時事)

 現在、40の国と地域が英国からの渡航を制限しており、欧州連合(EU)は、フランスが統一した対応を取るように求め、検討中だ。物流がストップしたことで、英国内のスーパーなどで生鮮品が不足し始めているほか、フランスでもクリスマス休暇の買い物で、物不足になり始めている。

 英国からクリスマス休暇でフランスに帰国する英在住のフランス人が、足止めされているだけでなく、渡航が許可された場合、英国でのPCR検査が義務付けられ、検査費用が高騰しているため、帰国を諦める人が急増している。

 仏側から英国に物資を運ぶ運送会社は、英国に搬送した場合、トラックが戻れなくなる可能性が高まったとして、英仏海峡トンネルを通る物資運搬用のコンテナ利用に切り替える会社も出ている。ただ、英国到着後、コンテナを運ぶトラックの手配が困難な上、道路の渋滞が深刻なため見通しは定かでない。

 一方、ドーバー・カレー間を利用する貨物トラックは1日平均約1万台だが、ドーバーはフランスに渡れない貨物トラックで溢(あふ)れ、運転手は国境管理関係者に怒りを爆発させている。貨物運航再開に向けてジョンソン英首相とマクロン仏大統領が合意した対応策は23日にも実施される。

 ジョンソン氏は、英国に入る食品のごく一部にしか遅延の影響はなく、スーパーのサプライチェーンは「強力で堅固」だと述べた。ただ、実際にはクリスマス用品を買う人々の長蛇の列ができており、早急な解決が望まれている。

 一方、英ロイヤルメールも航空便の制限に伴い、アイルランドを除く全欧州各国へのメールサービスを一時的に停止した。

 英仏海峡トンネルを利用する鉄道ユーロスターの運営会社は、英仏で解決策が合意されれば、23日か24日から英仏間の運行を開始するとしている。英仏に生産拠点を持つトヨタ自動車は一時操業を停止しており、日本企業にも影響が出ている。

(パリ 安倍雅信)