英がきょうEU離脱、欧州議会で別れの大合唱

 欧州連合(EU)の欧州議会は29日、ブリュッセルでの本会議で英国のEU離脱協定案を承認した。31日に英国は正式離脱する。

欧州議会

29日、ブリュッセルで開かれた欧州議会で、英国の欧州連合(EU)離脱協定案を採決し起立する議員たち(EPA時事)

 投票後、議員らが立ち上がり議場で別れの歌を合唱し、議員の中には胸を詰まらせ涙を流す光景も見られた。1973年にEUの前身、欧州共同体(EC)に加盟して以来、英国は重要な加盟国であり続けたが、国民投票で離脱を決め、3年半の迷走の末、EUとしては初めての加盟国離脱となる。

 離脱後は混乱を避けるため、直ちに移行期間に入り、通商協定などの協議に入る。移行期間はEU分担金を払い、これまで通りEUに従う一方、EUの重要な政策決定に英国は参加できない。ジョンソン英首相は、今年末までに速やかに移行期間を終えたいとしているが、専門家たちは協議には多くの課題があることを指摘している。

 欧州議会は賛成621、反対49で離脱協定案を承認。投票後、議員らは立ち上がり、手をつないで別れの曲として日本でも知られるスコットランド民謡「オールド・ラング・サイン」(日本では「蛍の光」)を合唱した。女性議員の中には涙を流す場面もあり、英国の欧州議員らは議場で英国の国旗をまとい、議会としては珍しく感傷的な雰囲気に包まれた。

 欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長はあいさつで、英作家ジョージ・エリオットの言葉を引用し「われわれは別れの苦しみの中でのみ、愛の深さを見詰める」と語り、「われわれは今後もずっとあなたを愛する。遠く離れることは決してない。欧州よ永遠に」と叫んだ。

 英国のブレグジット党党首のファラージ欧州議会議員は「欧州は好きだが、EUは嫌いだ」と最後まで反EU発言を議会で繰り返した。欧州議員の多くが離脱協定案に賛成票を投じた半面、大半の議員は大混乱を招くことが予想される「合意なき離脱」を回避するために反対しなかったと述べ、数人の議員がメディアのインタビューで、EUはいつでも英国が帰ってくることを歓迎すると述べた。

(パリ 安倍雅信)