熱帯雨林の再生保護が鍵

迫る気候変動の脅威 どうする大災害への備え(4)

NPOアジア植林友好協会代表理事 宮崎林司氏

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 みやざき・りんじ 三重大学農学部林学科卒業後、国内林業を皮切りにインドネシア、マレーシアなどの森林調査、開発などに従事。2002年に熱帯雨林再生のためにアジア植林友好協会を設立。

 ――現在の活動は。

 植林活動で、インドネシアのカリマンタンとバリに仲間たちと一緒に年5、6回、足を運んでいる。植えっ放しではだめで、植林後の観察、管理も必要だからだ。樹種は地場に適したユウカリの類のアンププが多く、活着率もいい。バリ島では昨年6月までで75671本の植林ができた。植林面積は約125ヘクタールで東京ドーム約27個分。当地の州政府から頼まれたのは2000ヘクタールほどで、まだまだ先は長い。

 ――なぜインドネシアか。

 林業関係の仕事に就いていたが、この地域での過剰な伐採の弊に気付き、会社をやめ熱帯雨林の保護活動を始めた。ほかに当地のオランウータンの森づくりも手掛けている。

 インドネシアの問題だからインドネシアがやればいいじゃないかというのは一つの理屈だが、当地では手助けを切に必要としている。

 また今日の異常気象、気候変動は世界的なもので、しかも「森林伐採問題への対応なしに気候変動問題の解決はあり得ない」と言われ、私も経験上、そうだと確信している。日本の気候はインドネシアの海域の気象につながっている。ところがもう何年も前からインドネシアの森林は虫食い状態になっていて、蒸発する水が少なく、まばらな雲しかできなくなった。それが原因で、不安定でばらつきがある気象、ゲリラ豪雨や旱魃(かんばつ)などが生まれ日本にも大きな影響を与えている。

 ――とは言っても、植林は労力のいる活動だ。

 確かにそうで、しかも付託された場所は、火山爆発の被害地で植林開始当時、岩と火山砂とわずかな草の生える荒涼地だった。植えても、普通はみな枯れてしまう。

 雨があまり降らないから、我々は植えた木一本一本に2㍑のペットボトルを逆さまに置いて、水がゆくようにした。しかしこういう作業は一定の本数を超えると、とてもやってられなくなった。

 そこで、日本から生分解のプラスチック鉢を送ってもらって使って見ると、苗木の根っこがきちっとカバーされ、活着率もよくなった。4年前からだが、格段に枯れにくくなった。作業もスムーズだ。政府のお偉方が見学に来るが、彼らは、荒地でもいちばん厳しいところだと分かっているから、着実に植林の数が増えているのを見て、とてもびっくりしている。

 ――今後の展望は。

 植林は結果が出るまで年月がかかるが、その一方で、5年たつと、周りの草も違ってきて全体で緑が増えたのが分かる。植えた木だけじゃなくて、全体が再生し、自然の息吹が感じられるようになる。

 自然には復元力がすごくあるが、人間が手助けしない限り自然は復元という能力を発揮できない。逆にいうと、人間は植えて管理することが仕事。自然の再生能力を引き出すための植林という考え方が大事だと思う。自然の力を活用して、自然を元の姿に戻すのが目的だ。

 気候の緩衝地帯としての自然の役割が十分でないから異常気象が起き、自然災害が発生する。緩衝地帯をどんどん広げていくことが肝要だ。異常気象の原因を根本から断たないといけない。

(地球環境取材班)

=おわり=