衆院選への視点 国のビジョン見極め選択を


政治部長代理 武田滋樹

 第48回衆議院選挙が公示された。政権選択の選挙として、安倍晋三首相率いる自公連立政権が継続するか否かが最大の焦点だ。また、歴史的な視点で見ると、今回の選挙は1998年に民主党として結党して以来、常に野党第1党、あるいは政権政党として自民党に対抗してきた民進党の崩壊によって、混沌(こんとん)状態になった政治の枠組みを新たに作り上げる第一歩となる選挙だ。

 現時点では、連立与党の自民・公明、現実的な外交安保政策と憲法改正などを旗印にする希望・維新、安保法制白紙撤回と憲法9条改正反対などで結束する共産・立憲民主・社民の三つ巴(どもえ)の争いとなっている。この鼎立(ていりつ)状態が続くのか、自公政権が一層強化されるのか、それとも希望や立憲民主が奮起し政権交代可能な二大政党制に向かうのか、その岐路に立っている。

 二大政党制は1994年の小選挙区(比例代表並立)制導入(実施は96年)以来の念願だが、民進党はついにそれを実現できなかった。その根本原因は外交・安保政策や憲法改正、人口減少・少子高齢化社会への対策など国の根幹に関わる問題について、結党当初からの党内の左右の理念対立によって統一的なビジョンと政策を示せなかったことにあろう。

 そういう意味で、希望が民進からの立候補希望者を安保法制容認や憲法改正支持という基本政策を基準に選別したことは理解できる。しかし、それは第一歩でしかなく、二大政党の一翼を担うためには、基本政策を深めて明確な将来のビジョンを示さなければなるまい。また、早く「駆け込み寺」的な状況を脱して組織体制を整備する必要もあるだろう。

 一方、立憲民主は民進の前原誠司代表が苦悩した共産との選挙協力を行う。今回の選挙で政権を目指さないとか、共産との連立は目指さないなどと防御網を張っているが、政権選択の選挙で、綱領に「今、アメリカ帝国主義は世界の平和と安全、諸国民の主権と独立にとって最大の脅威」との認識や日米安保条約の廃棄、自衛隊の解消を明記する政党と協力することのインパクトは重大だ。

 安倍首相率いる自公政権も国政選挙4連勝という実績により党内外で「安倍1強」ともてはやされたが、森友・加計疑惑などを通して、国民の不満が大きいことが分かった。首相が命名したように日本は今、社会主義思想に影響を受けた時代錯誤的な対応や従来通りの官僚的な対応では克服し難い「国難」に直面している。国の将来のビジョンを描ける政党はどこか。有権者の眼力も問われている。