神奈川4区 瀬戸際、浅尾を攻める自民
’14衆院選 注目区を行く(5)
横浜市と鎌倉市にまたがるJR大船駅。リニューアルされたモダンな駅舎と、駅前に広がる雑多な商店街や狭い路地が対照的な姿を見せる。日の暮れた同駅笠間口で街頭演説する前みんなの党代表、浅尾慶一郎の前を、足早に人々が通り過ぎていく。
同じ時刻、浅尾がいる笠間口から南に150㍍離れた同駅東口。民主が公認を見送り、無所属で活動する荻原隆宏が支持を訴えるが、立ち止まる人はほとんどいない。その状況は、1駅離れたJR本郷台駅前で叫ぶ自民の前職、山本朋広も同じだった。
自民、民主、民主、自民、民主、みんなと、小選挙区制が始まって以降、選出議員の顔ぶれが移り変わる選挙区。特定の支持政党を持たない無党派層の多い地域だ。この地で選挙戦を一歩リードするのは、前回ダブルスコアに近い得票で山本を引き離し勝利し、知名度で勝る浅尾だ。
みんなの党の突然の解党劇。「江田憲司幹事長降ろし」から始まった党内騒動は浅尾に逆風として吹き付ける。一方で、代表として解党を決定したことでマスコミへの露出が大幅に増え、知名度をさらに上げる効果も生んだ。
みんなの党解党に伴い10億円を超える政党交付金を国庫に返納することを「日本で初めてのこと」とアピール。「政党公認候補に比べ制約は多いが、国民の審判を受けるためにあえて無所属立候補を選んだ」と訴え、解党のマイナスイメージをプラスに転換しようと力を入れる。さらに選挙後の政界再編をアピールし、支持者のつなぎとめを図る。
浅尾の訴えの中心は「景気回復」。消費税8%から10%への再増税について「景気回復が確かなものとなるまで凍結」を主張。不足する財源については「歳入庁設置による徴収漏れの解消」などを提案する。
前回、京都から国替えし比例復活した山本。公示前から安倍晋三首相や菅義偉官房長官が来援し、その後も石破茂地方創生相、塩崎恭久厚労相、下村博文文科相、谷垣禎一幹事長、小泉進次郎政務官などが駆け付けた。みんなの党解党による浅尾への逆風は、山本にとって好機。山本の雪辱を果たさせ、無所属で比例復活がない浅尾を追い落とすため、自民は重要閣僚・党幹部を続々と送り込み、攻めの手を緩めない。
山本も「景気回復」を訴え続ける。「株価がこの2年間で2倍以上に上がり、年金会計の運用益は23兆円に達した。これはみなさんの年金に反映するのです」。アベノミクスの成果は庶民にも及んでいると繰り返し強調。また、文科政務官を務めた山本は、道徳の教科化や学制改革・大学改革など教育関連政策にも力を入れ、無党派層を掘り起こし浅尾を追い上げる。
無所属の荻原隆宏、共産の加藤勝広は、脱原発や集団的自衛権の行使容認反対などを訴えているが浸透せず、伸び悩みの状況だ。(敬称略)
(2014衆院選取材班=竹林春夫、豊田剛、小松勝彦、湯朝肇、岩崎哲、繁田善成)
(終わり)
▽神奈川4区(横浜市栄区、鎌倉市、逗子市、葉山町)






