北海道1区 新党大地の変節で自・民 伯仲
’14衆院選 注目区を行く(3)
「ちょうど2年前の衆院選では、この1区で自民党はついに民主党の牙城を切り崩しました。市民は新しい風を求めたのです。皆さん、この流れを変えるわけにはいきません」。公示日の2日、自民党公認の船橋は札幌市内の中心街・大通公園で第一声を発した。
全国的には自民優勢が伝えられているが、船橋の発する言葉や表情には余裕よりはむしろ悲壮感が漂っていた。というのも、鈴木宗男が率いる新党大地(以下、大地)が道内の選挙区に候補を立てず、全面的に民主党に協力する態勢をとったからだ。
前回の選挙で船橋は約8万6000票を獲得し、民主の横路孝弘に約6000票の差をつけた。当時、大地が立てた清水宏保は約4万5000票を獲得しており、その票が今回、民主に流れれば船橋に勝ち目はない。船橋が危機意識を持つのは当然だ。
「マスコミでは自民党有利と言っているが、ここは全然違う。一人でも多くの人に会って名前を知ってもらわなければ勝つことはできない」と語る船橋。道東の北見市出身だが、この2年間、土曜、日曜は必ず札幌市内に入って多くの会合に出席し、その様子をインターネットに流して周知を図ってきた。
大地が民主との選挙協力に動いた背景には、鈴木宗男の抱える“事情”がある。11月24日、民主と大地の共同記者会見で鈴木は、「前回(2012年)は互いに協力関係をとることができずに自民に利する形をつくってしまった。今回は反自民で協力体制をとる」と語ったが、その内実は民主への“朝貢”にも似ている。
大地は道内の選挙区に候補者を立てず民主に全面協力し、前回、大地の比例枠で繰り上げ復活当選した娘の鈴木貴子は北海道7区(釧路・根室市など)から民主公認として立候補させる。全面協力の見返りに、民主は鈴木貴子を北海道の比例第1位に遇したのだ。かつて自民党の派閥領袖(りょうしゅう)にもなった故中川一郎の秘書として政界入りし、その後、自民の国会議員として活躍した鈴木宗男。自民を離れ大地を旗揚げした後も「保守の意地」を張っていた鈴木が、「娘の一議席を死守させたいがために民主党入りさせた」と揶揄(やゆ)する声も上がっている。
一方、民主党陣営だが、かつて民主王国と呼ばれた頃の勢いは見られない。「革新のプリンス」といわれた横路もすでに73歳。公示日、船橋陣営から500㍍ほど離れた札幌駅前で同時間帯に第一声を発し、「今回の選挙は大義のない選挙。アベノミクスといっても道民には実感がない」と訴えたが、集まった人数を比較すると圧倒的に船橋に軍配が上がった。
12月5日には、安倍晋三首相が札幌入りして船橋の応援演説を行ったが、1000人を超える人だかりとなり、首相の人気が健在であることを印象付けた。
両党が伯仲する中、“花の一区”の激闘は後半戦に突入している。
(敬称略)






