群馬5区 ひたすら「お詫び」の小渕
’14衆院選 注目区を行く(4)
観劇や顔写真付きワインの配布などで関連政治団体の不明朗な収支が発覚し経済産業大臣を辞任した自民党の小渕優子が出馬する選挙区。すでに当選5回だが、「一から出直す」として、初出馬のような“どぶ板”選挙運動を展開している。
派手な街頭演説はしない。大規模集会も一切開かない。小まめに短時間の拠点遊説をし、ひたすら頭を下げての「お詫び」行脚だ。
公示日には、約200人集まった支持者の前で靴を脱ぎビールケースの上に乗り目に涙を浮かべながら支援を訴え選挙戦をスタートさせた。選挙区が広大ということもあって、選挙カーを見かけることはめったになく「深く潜行している」(地元関係者)状況だ。
小渕の“城下町”吾妻(あがつま)郡中之条町の中心にある生涯学習センターのツインプラザには小渕の父・故小渕恵三元首相の銅像が建っている。台座には「天の時、地の利、人の和」の言葉が。同施設の真下が小渕事務所なのだが、雰囲気はひっそりとしており、選挙中とは思えない静まり方だ。支持者のもとへ出向いて頭を下げ、票固めに徹していることを裏付けているようだ。
市民オンブズマン群馬から公職選挙法違反で告発されてはいるが、支持者の間には、小渕氏を責める空気はない。「開票と同時に当確がでる」との見方さえ出ているが、これを機に、「父親の時代からの後援会の古い体質を改めていっている」(同)という反省の声も出ている。
出馬前には、高崎事務所に「立候補を取り消さなければ射殺する」という脅迫状が届いた。小渕事務所は県警高崎署に被害届を出し、同署は捜査中だという。
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)では小渕の「出馬」について、「選挙民の民度が問われる」「立候補を許す民衆が愚劣だ」などの書き込みが列をなすが、ほとんどは選挙区外からの声だ。
地元にしてみれば、「小渕以外に選択肢がない」(同)というのが現実で、野党は民主党が対抗馬を立てられず、共産党から糸井洋、社民党から小林人志が再挑戦しているものの、小渕票を切り崩すには力不足だ。
中選挙区制の時代に社会党(現社民党)は同党書記長まで務めた山口鶴男(草津町出身)が長年議席を保っていたが、小選挙区制になって議席を失い、小林が選挙区外(太田市)出身のため、思うように票を集められない。
このまま小渕“圧勝”のムードが選挙戦終盤まで続きそうだが、その後が懸念材料だ。当選しても、公職選挙法違反疑惑の捜査は続く。連座制が適用されれば、「圧勝」の意味がなくなる可能性もある。先行き不安を抱えながらの必勝の戦いでもある。
(敬称略)
(2014衆院選取材班)