国民投票法改正案 成立急ぎ条文案審議に入れ
憲法改正について議論する衆院の憲法審査会がようやく開催された。先の通常国会で自由討議を行って以来およそ半年ぶりであり、菅政権では初となる。改憲の是非を問う国民投票の利便性を高める国民投票法改正案の成立は待ったなしだ。今国会内で成立させ、憲法条文案の審議に早く入れるよう歩を前に進めるべきである。
採決先行を国民が表明
自民党の憲法改正推進本部長を務めた細田博之氏が衆院の憲法審査会会長に就任し、新たな衆院憲法審がスタートした。これまでと違うのは、野党側に、審議拒否をせず、きちんと議論する姿勢を明確にする国民民主党が日本維新の会と共に存在していることである。
「安倍政権下では憲法の議論をしない」とした立憲民主党や共産党などと一線を画している。評価したいのは、国民民主党が国民投票法改正案の審議を優先させて採決し成立させる意思を明らかにしていることだ。早期採決を求めてきた与党の自民、公明両党は、この国民民主党と日本維新の会との連携を深めて成立させてもらいたい。
改正法案の議論はいわば、改憲への入り口を整えるためのものにすぎない。最も難航するのが次の作業だ。各党が改憲の条文案を作り、それらを議論した上で一つの改正原案にまとめ上げなければならない。
自民党は細田氏に代わった衛藤征士郎本部長が「自衛隊の明記」「緊急事態条項」「合区の解消」「教育無償化の明記」の4項目のイメージ案を年末までに具体的な条文案にまとめるための起草委員会を立ち上げ、自ら委員長に就任。来年の通常国会の憲法審に改正原案を提出する意向を表明した。公明党の中には「自民党の一部の話だ」と突き放す幹部もいるが、決して他人事(ひとごと)にすべきではない。
新型コロナウイルスの感染拡大に迅速に対処するための緊急事態条項盛り込みは急務のはずだ。首相は改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づき全国に緊急事態宣言を発したが、欧米のように憲法に緊急事態が規定されていればもっと効率的な対処ができたろう。第3波が到来し、緊急事態宣言を再度出さねばならなくなるかもしれない。東日本大震災などの大自然災害や中国公船による沖縄県・尖閣諸島沖領海侵犯といった安全保障上の国家緊急事態にも十分に対応できない点で同じだ。
立憲民主党の安住淳国対委員長は「自民党が独走するのであれば憲法論議はできなくなる」と新たな逃げ口上を使いだした。だが、議員数は減っても改憲派だけが残った国民民主党は「投票法改正案の先行採決に応じる」とし、ネット広告規制については採決後の追加的な議論で対応すればいいとの姿勢だ。さらに「自民党の4項目のようなつまみ食いではなく、総括的で体系立った本格的な改憲草案を年末までに提示する」との姿勢を示している。自民独走論はもはや通用しないのである。
衆参で活発な議論を
参院は平成30年2月以来、実質的審議をしていない。国会会期は来月5日までだが、衆参の審査会で活発な議論をするよう求めたい。