「少なく産み大事に育てる」が定着

人口減少社会を超えて 第2部・戦後人口政策の誤り (5)

一家団欒より個人的自己実現

 第1次ベビーブームのピーク時の誕生270万人(1949年)よりはすこし少ないが、71(昭和46)年から74(同49)年までに年間210万の新生児(団塊ジュニア世代)が生まれた。最近2、3年の出生数の倍以上の勢いだった。

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 しかしそこが出生数のピークで、以後、大都会を中心に「少なく産んで大事に育てる」という出産傾向が続き、出生数は激減していった。

 幼児の「早期教育」の必要性を説く教育実践法がまたたくまに巷間(こうかん)広がったのもこのころ。育児雑誌が次から次へ出版され、そこに「IQ200児続々誕生」と見出しが躍り、「0歳から3歳までの大脳教育が子供の将来を左右する」と書かれ、若いお母さんたちを慌てさせた。

 くだんの「早期教育」は、海外にも広まり、特に韓国では早期教育に転じてしまっている。今も極端な学歴社会で大学に進学しなければ就職も厳しいと言われる。難関大学を卒業した場合には高給が望める財閥への就職の可能性が高まるため、韓国の子供は大学受験が終わるまで厳しい試練にさらされている。

 韓国は日本以上の少子化社会になっており、2015年時の出生率は1・24で、OECDに加盟している34カ国中で最下位の数字だ。日本の出生率が1・46なので、韓国の状況は日本を大きく上回る深刻さだ。

 わが国では戦後、人口の多い戦中派や団塊世代が農村から都会へと流出、戦後復興と高度経済成長の担い手となり、やがて一家を構えた。都市に集中した人々のため、団地の建設が盛んに行われたが、2DK、3DKなどの広さの住宅に一家4人が暮らすケースが多かった。

 少なく産み、教育に投資し、高学歴を目指すことが一般化した。家族の結び付きや一家団欒(だんらん)よりも、個人的な自己実現に重きを置く都市型文明の産物であった。核家族が増え、小家族という家族形態が定着していった。

 その一方で、女性の社会進出も少子化の原因だという意見は根強い。ただ、世界経済フォーラムによれば韓国と日本はともに、OECD加盟29カ国中で女性の社会進出が難しいランキングのワースト1と2に並んでいる。

 日本の場合、東京を中心とした首都圏の専業主婦や家事手伝いの若い女性の率が、地方より圧倒的に多い。にも関わらず、東京の出生率は低く、共働きの多い田舎の女性の方が子供を産んでいるという事実は見逃せない。

 「少子化」が進む背景として一般に①出産適齢期にあたる女性人口が減ってきた、②晩婚や非婚を選ぶ人たちが増えてきた、③結婚しても子供をつくらない夫婦が増えてきた、などが考えられる。首都圏を中心としてこの傾向が著しいが、早晩、地方にも波及し、人口減少が一層進むとみられる。

(人口減少問題取材班)