結婚したい若い男女は9割

人口減少社会を超えて 第2部・戦後人口政策の誤り (6)

求められる総合的な支援

 作家の山本肇さんが、「戦時中の『産めよ、殖やせよ』のスローガンは旧約聖書の聖句がもとになったもので、本来は富国強兵だけの意味ではなかった」とその著『少子亡国論』で指摘している。

400

 産み、殖やすのは、あくまで「人間賛歌」という考え方が根にある。いつの時代も「子供は国の宝」で、「多産」は国民の上昇志向を反映した健全な精神の発露である。子供が生まれ育つということは、国家において夢や希望のバローメーターだ。

 かつて結婚し、子供を産むのは当たり前、という通念が社会生活の中で生きていた。近所の人や職場の上司などで、「良い伴侶を世話したい」という世話好きがうるさく感じられるほどいた。それが変わってしまった。

 2016年の婚姻件数は前年より1万4633組少ない62万523組で、戦後最少。初婚年齢の平均は男性が31・1歳、女性が29・4歳でともに前年と同じだった。初婚年齢が上がる「晩婚化」のペースは和らいでいるが、結婚をしない「生涯未婚」を選ぶ人も増えている。

 戦後、日本政府は、増大する人口増や出生数と、その一方の出生率低下をにらみ合わせ、人口が増えも減りもしない将来の人口(静止人口)の分布を目指した。その苦労の跡を見ることはできる。例えば1974年の日本人口会議での「子供は2人」宣言も、人口構造の「釣鐘型人口」社会を目指そうとしたものでもあった。

 しかし、その希望的観測は見事に外れた。出生率は2どころか、75年には1・91に低下、2005年の1・26まで下がり続け、10年は1・39、12年は1・41になっていった。今日の非婚化と晩婚化の事態を政府は予測できなかった。

 その一方、希望もある。いずれは結婚しよう、結婚したいと考える未婚者の割合は、15年統計で男性85・7%(前回10年86・3%)、女性89・3%(同89・4%)で、依然として高い水準を保っている。

 結婚願望を満たせない理由は「出会いがない」と「経済的事情」が大きい(2017年の国勢調査)。結婚していない人がよく口にしがちな「仕事が忙しいから」は男性でも約1?2割、女性は1割以下となっている。

 20代や30代の結婚適齢期世代が、安定した収入や生活見通しのできる就業などの社会環境づくりが急がれる。特に出産や育児において、女性の社会経済活動を妨げない総合的な社会対策が必要だ。

 政府は2015年、「少子化社会対策大綱」を閣議決定し、「結婚、妊娠、子育てに温かい社会の実現」を方針として掲げた。

 それまでの大綱は子育て支援が主だったが、この時から初めて、結婚から子育てまでの各段階に応じた取り組みが始められるようになった。出生率を1・8とする実質、「産めよ、殖やせよ」の政策に踏み込んだといえる。

 男女が結び付いて夫婦となり、子供をもうけて子孫を残してゆくという営みがあって、人類の未来がある。日本の未来も、国民のこのような営みが続けられてこそ保証される。この自明の真理に立ち返って人生を考え、それをサポートする社会の仕組みを構築してゆかなければならない。

(人口減少問題取材班)
=第2部終わり=