外交に支障来す暴言癖
フィリピン国内では高い信頼を得ているドゥテルテ大統領だが、それとは対照的に、米国を中心とした国際社会では強い非難を集める結果となっている。その原因は、ドゥテルテ氏の歯に衣(きぬ)着せぬ暴言癖にある。
大統領に就任する前から暴言はドゥテルテ氏の「持ち味」の一つになっており、国内的にはあまり問題視されてこなかった。フィリピンでは多少口が悪い政治家がむしろ率直に見えて好まれる傾向があるためだ。
ドゥテルテ氏と似たような政治家としては、エストラダ元大統領が挙げられる。皮肉が効いた毒舌が特徴で、庶民に人気があり、在任中の汚職で有罪になったにもかかわらず、恩赦となり、後にマニラ市長に当選して政界に復帰した。
ドゥテルテ氏の人気はこうしたフィリピン独特の国民性に支えられている。しかし、大統領に就任し、海外メディアから発言がクローズアップされるようになると、国際社会で急速に問題視されるようになり、ついには外交に支障を来すまでになった。
外交デビューとなったラオスでの東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議では、出発直前の記者会見で、オバマ氏が麻薬対策における人権侵害に関して会談で取り上げる考えを示したことに関し、「フィリピンは米国の植民地ではない」と述べ、侮辱的な言葉を交えながら強い不快感を表明。
さらに、フィリピンが米国の植民地だった19世紀初頭に、ミンダナオ島で米兵が行ったイスラム教徒への虐殺事件を取り上げ、米国に人権のことを言う権利はないと主張。もし口出しすれば会談の場でオバマ氏を罵倒すると警告した。
このドゥテルテ氏の発言によりオバマ米大統領との公式会談は急遽(きゅうきょ)中止となり、「暴言王」のイメージは国際社会で完全に定着してしまった。
この一件に関しては、フィリピン国内でも賛否両論の議論となっている。前上院議長のドリロン上院議員は、「(中止になった公式会談は)オバマ氏と個人的なレベルで互いを知る良い機会だった」と指摘。「外交は国益のためにあることを忘れてはならない。友好的でない態度は何も国にもたらさない」とドゥテルテ氏の姿勢に懸念を表明した。
一方、パッキャオ上院議員は、「大統領は時々周囲の人々が好まない言葉を使う」と暴言癖を認めながらも、「フィリピンについて非難するのは簡単だが麻薬撲滅は容易ではない」と述べ、オバマ大統領の姿勢にも問題があると指摘し、ドゥテルテ氏を擁護した。
(マニラ・福島純一)