七夕を世界的な行事に
短冊に願い事を書き、星に願いを懸ける七夕。日本各地の七夕まつりは、新暦7月7日~月遅れ8月9日のどこかで行われている。その七夕を「クリスマスやバレンタインと並ぶ世界的な行事にする」との思いで、全国の七夕行事の支援活動をしているのは、一般社団法人七夕協会代表理事の小磯卓也さんだ。小磯さんに七夕協会の活動や七夕の魅力について聞いた。
(聞き手=宗村興一)
「生きる喜び・生きる悲しみ」世界から短冊を通し集める
一番の幸せは大切な人に喜んでもらうこと
七夕協会はどんな組織ですか。

こいそ・たくや 昭和58年2月11日、栃木県宇都宮市生まれ。大学卒業後、総合通販「ネットプライス」に入社。自社・提携サイトのECサイトを20社以上のマーケティング・コンサルティングの経験を経て、2008年子会社「デファクトスタンダード」にてブランド品のリサイクル事業「Brandear」の創業メンバーとしマーケティング全般に携わり現在顧問。2015年Personal Marketingを設立。2016年一般社団法人七夕協会を設立。
全国の七夕行事の奨励、支援をしている非営利組織だ。企画の支援や人材支援、観光支援など、できることをチームで考えて貢献していく。全国の人々が集まる東京に拠点があるため、日本の各地域の七夕行事に貢献できるチームになっている。昨年の7月7日に発足したばかりだが、仙台や陸前高田の七夕行事も支援した。
今、七夕を普及する意義は。
生き方を見失っている人が増えてきたと思う。七夕は、みんなの希望、夢が集まる日です。七夕が、今を生きる意味、何のために生まれて、何をして生きるかを見詰め直す機会になってほしい。
七夕で、世界中から短冊を通して「生きる悲しみ・生きる喜び」を集める。多くの人々が抱える現実の欲求を集計、分析することで、みんなが本当に困っていることが明らかになる。人々の欲求を知り、それを価値に変えて、創造し続けることこそ、政府・企業・個人の責任ではないかと思う。日本人の和魂の考え方は、世界が家族だと考えてきた歴史がある。その良さが七夕にはある。
七夕の歴史にはいろいろな説がある。
七夕には、中国語読み「しちせき」を「たなばた」と日本語読みするほど、古い時代から複合的な合成過程がある。七夕まつりも、新暦7月7日~月遅れ8月9日のどこかで行われる行事だ。日本の「盆行事」と中国の技芸上達を願う星祭の行事「乞巧奠(きっこうてん)」が合体したものと言われている。江戸時代に入ると、庶民に広がり五節句の一つとして、全国的に広まった。願い事を書いた短冊を笹の木に吊るし、織姫と彦星が天の川を挟んで出会えるという行事が、節供、節日の一つになった。
七夕を世界的な行事にしたいと思った理由は。
7月7日から8月9日の一カ月間にわたって、全国各地で行われている日本行事は、七夕しかない。なのに、日本の三大行事であるクリスマスの経済効果は6470億円、ハロウィンは1200億円、バレンタインは1080億円と言われているのに、それに比べて七夕は盛り上がりに欠ける。実際に、今住んでいる町に笹の木や短冊が設置されていなかったり、学校でも短冊が配られなくなったという話も聞く。
そこで疑問に思ったのは、ここは日本なのになぜ日本の伝統行事がクリスマスやハロウィンのように国全体で盛り上がる行事になっていないのか。自分が日本人として生まれたからこそ、日本を幸せにしてから世界を幸せにしたいという順番をすごく大事にしている。日本中が幸せになる行事として、みんなで七夕を日本の三大行事と肩を並べる行事にしたいと考えている。
七夕は他の行事と比べると、着る物や食べ物、行く場所などが、明確にない。そこで、七夕の時に着物や浴衣を着て、和菓子や寿司を食べ、甘酒を飲む。さらに歌舞伎や落語などの伝統行事に触れる。そうすれば日本中に活気があふれて、世界中が日本に行きたいと思うようになる。そのような七夕祭りを日本中でやれば、7~8月に、世界中の人が日本に人が集まるのではないか。
七夕から新しい文化が生まれる。
七夕で「喜ばせごっこ」をする文化をつくりたい。人間の一番の喜びは、大切な人に喜んでもらうことだと思う。だから七夕で自分の夢を描き、さらに大切な人と夢を知り合うと、より夢が明確になる。例えば、彼の夢がこれなら私はこういう形で助けられるとか、自分の夢が誰かを助けたりできることが、さらなる喜びになる文化、環境になってほしい。
極端だが、使命を全うすることは、今代表の私がいなくなっても誰かに引き継がれることをしないと、全うしたとは言えないと思う。私がいなくなっても、七夕行事によって誰かを喜ばせる風土が残っていれば、意思を継いで七夕がよりよく生まれ変わることになる。損得勘定ではなく、善悪勘定でやる考え方でやっている。
今後の目標は。
七夕協会は非営利団体で、公益社団法人を目指したい。七夕で世界がよりよくなることがミッションで、お金儲けのためにはやっていない。非営利団体で、理事は報酬がない。楽しいからやっているメンバーばかり。経済効果が出ることはやはり、日本、世界のためになるかもしれないが、みんなでつくり上げることで、みんなが結果的によりよくなればいいと考えている。
また七夕を普及させることは、日本の伝統文化を復活させることでもある。昔から日本人は「和」の心を大切にしていた。本来、人間は幸せを追求し続けると、自分の幸せだけでなく、他人の幸せも意識するようになるはず。しかし、私たちは生き方を見失ってしまった。それを取り戻すのが七夕です。