国防長官訪日、同盟重視の表れ

米海兵隊第1海兵航空団司令 サンボーン少将に聞く

 米トランプ政権のジェームズ・マティス国防長官が2月3日に来日するのを前に、アジア太平洋地域の米海兵隊航空戦力を統括する海兵隊第1海兵航空団司令のラッセル・サンボーン少将が27日、世界日報の単独インタビューに応じた。サンボーン少将は、国防長官が最初の外遊として日本を含めた東アジアを訪問することについて「日米同盟とアジア太平洋地域の安全保障を重視することの表れだ」と述べた。

サンボーン

インタビューに答える米海兵隊第1海兵航空団司令のサンボーン少将=27日

 18日に岩国基地に配備された最新鋭ステルス戦闘攻撃機F35についても「日本と太平洋地域の防衛の重要性を示す強いメッセージ」と強調した。同機が米国外に配備されたのは初めて。

 昨年12月上旬に普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備されたばかりの攻撃ヘリAH1Zが20日夜、同県うるま市の伊計島の農道に緊急着陸したことについては、「計器が警告表示をしたため着陸した」と説明し、機体には問題なかったことを明らかにした。同ヘリは計器類を修理し、12時間後に再飛行した。

 サンボーン少将はまた、昨年12月に垂直離着陸型ヘリのオスプレイが空中給油中のトラブルで名護市沖に不時着したことについて、「パイロットが乗組員の安全と地域住民への影響を避けて着水した」として評価した。

 オスプレイの安全性について、4年前に普天間飛行場に配備されてから今回の事故までの間、約1万6千時間の飛行で無事故だったと指摘。オスプレイは地域の安全保障、人道・災害支援の環境を一変させたと強調した。

オスプレイの無事故1万6千時間超

トランプ大統領が就任したが、在日米軍に変化は。

 トランプ大統領が就任することで、日米同盟はより大きな影響力を持つようになるだろう。

 マティス国防長官が最初の外遊で日本を含めた東アジアを訪問することは、日米同盟とアジア太平洋地域の安全保障を重視することの表れだ。我々の部隊が日本、韓国、ハワイ、グアム、オーストラリアと幅広く展開している。日米両国の安全保障にとって重大な地域だからだ。

 しかも、今月18日に岩国基地に最新鋭ステルス戦闘攻撃機F35が10機、配備された。米国外の配備は初めてだ。日本と地域の安全保障、空域の安全がいかに重要かを示す強いメッセージになっている。

新型の攻撃ヘリが昨年12月に普天間飛行場に配備されたばかりだが、20日夜、そのうちの1機が伊計島に緊急着陸した。

 攻撃ヘリAH1Zが沖縄県うるま市の伊計島の農道に緊急着陸したのは、計器が警告表示をしたためだ。緊急のサインがあれば、着陸しなければならない。自動車でも異常を示すランプが付けば、安全確認のために一旦停止するのと同じことだ。

 航空機の場合はどこかに着陸しなければならない。当時は沖縄本島東の海を飛行していて、普天間飛行場に戻る途中、一番安全、かつ、地元の人々に影響を与えない形で着陸できる場所を探した結果が伊計島の農地だった。

 着陸後、すぐにヘリをチェックしたが、機体には問題なかった。計器類を修理した後、12時間後に再飛行した。

AH1Wスーパーコブラの後継機、AH1Zヴァイパーが昨年11月、普天間飛行場に配備された。

 4枚羽ブレード、機関砲、空対地ミサイルなどを装備し、従来機より航続距離や速度で上回り、3~4倍の目標識別能力がある。(液晶ディスプレイ表示の)グラスコクピットを装備し、より安全で信頼できる。バックアップシステムもある。

昨年12月、垂直離着陸型ヘリのMV22オスプレイが空中給油中に名護市沖に不時着した。

 夜間の空中訓練中にホースがオスプレイのプロペラに当たったために起きた事故だ。だが、パイロットが大胆で素晴らしい判断をした。乗組員の安全と地域住民への影響を避けて浅瀬に着水したからだ。

 この事故では地元の人を一人も傷つけずに済んだ。事故後、すぐに機体の残骸を回収し、サンゴ礁も傷つけずに済んだ。地元の人々は作業にとても協力的だった。

 5人の乗組員のうち2人は負傷したが2人ともすでに退院している。何千通のお見舞いおよび激励のメールやメッセージを受け取った。感謝の気持ちを伝えたい。

 現在はオスプレイが1機足りない状態だが、用意ができ次第、ただちに米国から搬送される。事故の最終報告書は、完成するまでにはもう少し時間がかかるだろう。

空中給油訓練は難易度が高いものなのか。

 この訓練はオスプレイの乗組員ならば誰もが必ずやらなければならないことだ。フィリピンから熊本に向かう時、途中で空中給油をしなければ到着できない。空中給油は昼夜問わず必要で、乗組員は常に準備しておかなくてはならない。

オスプレイの有益性は。

 アジア太平洋地域の80%が海で、数千の島で構成される。有事の際も人道支援・災害援助が必要な所でも、滑走路がなくても離着陸できるオスプレイは、どこにでも行くことができる。地域のゲームチェンジャー(状況を一変させるもの)だ。

 2011年の東日本大震災ではトモダチ作戦(当時はオスプレイ未配備)では海兵隊が真っ先に支援した。昨年の熊本地震の際には、訓練中のフィリピンから熊本に向かい、8万人分の災害物資を届けた。

 オスプレイは従来型ヘリCH46と比べ速度は2倍、積載量は3倍で約900㌔を積載できる。CH46では3日間掛けて到着したような所でも、4時間で行けるようになった。グラスコクピット搭載で、安全面でもはるかに向上した。

 オスプレイは4年前に普天間飛行場に配備され、二つの飛行中隊、計24機で構成される。今回の事故までの間、1万6千時間超の飛行で無事故だった。

地元との関係はどうか。

 大声で反対する少しの勢力と比べれば、米軍を支援してくれているサイレントマジョリティの存在は我々にとって励みになる。反対の声に影響されないよう、我々は日常の任務に集中している。

 隊員たちはゲート外で、数百種類もの地元交流を行っている。地域の一員としての自覚を持ち、海岸清掃、孤児院訪問などのボランティア活動を率先して行っている。安全性について地元の人々の不安を払拭(ふっしょく)できるよう、積極的な発信をしていきたい。

 (聞き手・豊田 剛)