【社説】福島沖地震 災害への備え再点検したい
深夜の揺れに驚きと不安を感じた人も多いだろう。福島県沖を震源とする地震があり、宮城県、福島両県で最大震度6強の揺れを観測した。
この地震で計130人超が死傷し、東北新幹線が脱線するなどの被害が生じた。近い将来、首都直下地震や南海トラフ巨大地震が起きる可能性も指摘されている。この機会に、災害への備えを再点検したい。
昨年2月にも震度6強
気象庁によると、今回の地震の震源の深さは57㌔、地震の規模(マグニチュード)は7・4と推定される。一時は両県に津波注意報が発表されるなど、11年前の東日本大震災の被災地は大きな不安に包まれた。
脱線した東北新幹線では、乗客75人が約4時間もの間、高架上で停止した車内に閉じ込められる事態となった。東北新幹線の全面復旧は4月以降になる見通しだ。このほか、地震の影響で停電や断水なども発生した。
揺れの強かった地域では1週間程度、最大震度6強の地震に注意する必要がある。今回の震源域は東日本大震災以降、地震活動が活発になっているという。福島県沖では昨年2月にもマグニチュード(M)7・3の地震が発生し、両県で最大震度6強を観測した。
しばらくは避難所生活をする住民もいるだろう。自治体は新型コロナウイルスの感染拡大に十分注意し、きめ細かい支援に努めなければならない。
政府の中央防災会議の作業部会は昨年12月、北海道から東北地方の太平洋沖にある日本海溝・千島海溝沿いでM9クラスの地震が起きた場合、甚大な津波被害が広範囲に及び、死者は最大約19万9000人に上るとの被害想定を公表した。
ただ早期避難に加え、津波避難ビルの整備で犠牲者を約8割減らせるとも指摘している。日本海溝と千島海溝の巨大地震はいずれも300~400年間隔で発生し、直近では17世紀に起きている。いつ生じてもおかしくない状況であり、対策を急ぐべきだ。
巨大地震は東北地方だけの話ではない。静岡県から宮崎県沖の日向灘にかけての南海トラフで起こると想定される巨大地震では、死者・行方不明者数が最大約23万1000人とされている。従来の想定では約32万3000人だったが、住民の避難意識向上などで減少した。さらに減らすための取り組みを進める必要がある。
一方、首都直下地震では、最悪のケースで埼玉、千葉、東京、神奈川の1都3県で2万3000人が死亡すると試算されている。住宅の耐震化や食料の備蓄、避難ルートの確認など、一人一人が日ごろからの備えを心掛けるとともに、首都機能移転なども推進すべきだ。
憲法に緊急事態条項を
大地震などの大規模な自然災害に対処するには、憲法に緊急事態条項を創設することも課題となる。新型コロナのような感染症や外国からの侵略に備える上でも欠かせない。
ロシアによるウクライナ侵略を受け、日本の安全保障上の課題が浮き彫りとなっている。緊急事態条項創設を急がなければならない。