【社説】国連安保理 中露に常任理事国の資格なし


2月28日、ニューヨークで国連総会の緊急特別会合開幕に際し、黙とうをささげる各国大使(EPA時事)

 国連安全保障理事会はロシアのウクライナ侵略を非難し、即時撤退を求める米国主導の決議案を採決に付したが、ロシアの拒否権行使で否決され、紛争解決の役割を果たせずにいる。安保理を機能不全に陥らせているロシアや、同調する中国に常任理事国の資格はない。

 ウクライナで集団虐殺

 ウクライナとロシアとの間では停戦交渉が行われたが、戦闘終結の兆しは見えない。ロシア軍はウクライナ第2の都市ハリコフで、市街地に集中的に砲撃を加える無差別性の高い攻撃を採用しているという。多くの死傷者が出ており、首都キエフでも同様の攻撃を計画している恐れがある。まさにジェノサイド(集団虐殺)であり、国際社会は人道に反する蛮行を繰り返すロシアを糾弾し、報いを受けさせなければならない。

 安保理は侵略国家への経済制裁や軍事的強制措置などを決定できる。だが、米英仏中露の常任理事国のうち1カ国でも拒否権を行使すれば決定できない。

 ロシアの侵略直後に採決に付された決議案は、日本を含む80カ国以上が共同提案国に名を連ねた。理事国15カ国中、米欧など11カ国が賛成し、中国、インド、アラブ首長国連邦(UAE)は棄権した。ロシアの特権悪用が許されないのはもちろん、中国が同調する動きを見せたのも常任理事国の役割を放棄したものだと言わざるを得ない。

 決議案否決後、11カ国の理事国の要請で全193加盟国で構成する国連総会の緊急特別会合が開幕した。この会合は、安保理が常任理事国の拒否権行使で「国際平和と安全維持」の責任を果たせない場合に開かれる。早ければ2日にもロシアやベラルーシへの非難決議案の採決を行う。国際社会が一致してロシアを孤立させることは重要だ。

 ただ、総会決議には法的拘束力がない。国連の中心である安保理の抜本改革を行わない限り、国連が平和のための役割を全うすることはできない。そもそも国際法に違反して平和を破壊している中国とロシアが、常任理事国として平和への責任をうたう安保理に居座っていることが自己矛盾である。中露両国を排除することが安保理の機能回復につながるはずだ。

 これまで日本、ドイツ、インド、ブラジルの4カ国(G4)は安保理の改革を求めてきた。昨年9月には「安保理改革の緊急性を強調する」との共同声明を発表している。G4は常任・非常任理事国の枠組み拡大などを訴えてきたが、中露両国の安保理排除も改革案に盛り込むべきではないか。

 排除に必要な国連憲章の改正には、総会構成国の3分の2以上が賛成し、全ての安保理常任理事国を含む加盟国の3分の2以上が改正案を批准しなければならない。ハードルは高いが、今回のロシアの暴挙を機に加盟国の支持を広げていきたい。

 旧敵国条項の削除を

 憲章改正でもう一つ急がれるのは、日独伊など第2次大戦の枢軸諸国に対する自由な武力行使を認めた旧敵国条項の削除である。この条項がロシアや中国に悪用される可能性は十分にある。日本は条項削除への働き掛けを強める必要がある。