【社説】北京五輪閉幕 誇らしい日本選手の戦いぶり
熱戦の続いた北京冬季五輪が閉幕した。日本は史上最多となる計18個のメダルを獲得する大健闘を見せた。メダルを取れなかった選手も最善を尽くし、美しいスポーツマンシップを発揮した。選手たちの誇らしい戦いぶりを讃(たた)えたい。
人権問題への批判封じる
新型コロナウイルス禍での開催で、バブル方式と呼ばれる厳格な感染対策が取られ、選手たちのストレスは大きかったと思われる。しかしこれ以上に問題なのは、ウイグル族弾圧への抗議など人権問題で選手たちが意思表示することが封じられたのに対し、中国側が政治的メッセージを一方的に発したことだ。
政治的中立を標榜(ひょうぼう)するIOC(国際オリンピック委員会)は、五輪憲章で競技会場などでの政治的、宗教的、人種的な宣伝活動を禁じているが、東京五輪から規制を一部緩和し、選手入場時などの表現行為を認めた。だが、中国の大会組織委員会は「中国の法律と規定に違反する場合は処罰を受ける」と牽制(けんせい)した。
一方、中国は開会式の聖火リレーの最終走者にウイグル族の選手を起用。人権問題などないかのような印象を世界に与えようとの意図は明らかだ。さらに大会組織委の報道官は記者会見で、ウイグル族への弾圧について「嘘(うそ)だという証拠が出ている」と主張。台湾選手団の呼称が「チャイニーズ・タイペイ」となっていることに関しても「台湾が中国の不可分の一部であることは国際社会で認められている」と回答した。
ドーピング問題も影を落とした。ROC(ロシア・オリンピック委員会)のフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ選手のドーピング違反が明らかとなったが、出場を認める決定は後味の悪さを残した。フェアプレーの根幹に関わるドーピング問題は今後さらに徹底した対応が求められることになろう。
対照的に選手たちのパフォーマンスは爽やかで心を熱くさせるものだった。特に日本選手の活躍と戦いぶりは素晴らしかった。スノーボード男子ハーフパイプ、スキージャンプ男子個人ノーマルヒル、スピードスケート女子1000㍍での金メダル3個は天晴れだ。カーリング女子では初の銀メダルなど、日本のウインタースポーツの扉を一つ一つ開ける快挙が続いた。
それらの選手たちの歩んできた道のりを多少なりとも知る日本人にとっては、選手たちの人生のすべてが凝縮されたドラマ、物語を観(み)ることになり、感動もひとしおだった。
またメダル獲得はならなかったが、フィギュアスケートでは負傷しながらも4回転半ジャンプに挑んだ羽生結弦選手など、ひたむきに挑戦する姿は大きな勇気を与えた。選手同士が互いの健闘を讃え合う姿も美しかった。日本人に限らず、世界中の報道陣やテレビで観戦した人々に感動を与えるものだった。
フェアプレーの模範に
こうした選手たちの戦いぶりは、改めてスポーツの力、平和の祭典としての五輪の意義を認識させた。それだけに、政治的中立やフェアプレーの精神をしっかりと守っていかねばならない。日本は今後もその模範となることを目指していくべきだ。