【社説】まん延防止拡大 医療と経済の維持・両立図れ


米製薬大手ファイザーの5~11歳向け新型コロナウイルスワクチン(AFP時事)

 新型コロナウイルス感染対策として広島など3県に出されている「まん延防止等重点措置」が、東京、長崎など13都県に拡大され、さらに北海道、大阪など8道府県への拡大が検討されている。

 感染力が強い新たな変異株「オミクロン株」の拡大による「第6波」に対処するためだ。医療体制を逼迫(ひっぱく)させないことを念頭に置いたものだが、同時に経済社会活動も維持していく必要がある。

5万人近い新規感染者

 オミクロン株は従来株に比べ感染力が強い一方、重症化リスクは低いと言われる。陽性者の大半は軽症か無症状だ。

 しかし、国内の1日当たりの新規感染者数が21日には4万9854人に上って4日連続で過去最多を更新し、徐々に病床使用率も高まっている。医療提供体制を維持するには、少しでも新規感染者の数を抑えていかなければならない。

 昨年夏の「第5波」で、自宅療養者が急激な症状悪化で亡くなったケースが相次いだことへの反省から、岸田文雄政権は医療提供体制の維持強化に力を入れてきた。軽症者らの健康観察や診療に協力する地域の診療所は、全国で約1万6000施設に増えた。飲み薬も配布されるようになった。それらの実効性が試されつつある。

 コロナとの戦いは、まさに総力戦だ。わが国の医療資源を最大限活用するために政府・自治体・民間がさらに連携を強化していくべきだ。

 まん延防止措置によって、飲食店に対し時短要請がなされ、グループでの飲食は4人以下。酒類提供の可否は知事の判断に委ねられた。政府対策分科会の尾身茂会長は「人流抑制ではなく、(会食などの)人数制限がキーワードになる」と述べている。飲食を4人以下とするのは、経済社会活動を維持しながら感染対策を行う方法とも言える。

 まん延防止措置の適用に伴い基本的対処方針も改定され、ワクチン接種証明書か陰性証明書の提示で飲食店やイベントの人数制限をなくす「ワクチン・検査パッケージ」の一時停止なども決まった。

 ワクチン接種者であってもブレークスルー感染が起きていることからやむを得ない措置だ。一時停止ということは、将来復活させることも念頭に置いているようだが、第6波の収束後、ウィズコロナで経済社会活動を活発化させていくには、3回目接種を条件として新しいパッケージを設ける必要がある。そのためにも3回目接種の前倒しが急がれる。

 感染者の急増で、全感染者を把握し入院や自宅療養などの調整を行う保健所の機能もパンク寸前だ。新型コロナが感染症法上の「2類」に位置付けられているためだ。これが季節性インフルエンザなどの「5類」であれば入院調整は不要となる。

5類への見直しも課題

 重症化しにくいと言われるオミクロン株が主流になってきたことで、5類への見直しも現実的テーマとなりつつある。小池百合子東京都知事や吉村洋文大阪府知事が指摘するように、政府は科学的知見を集めて本格的な検討を進めるべきである。