【社説】3県まん延防止 追加接種の前倒しを急げ


新型コロナ感染状況の指標

 国内で新たに確認された新型コロナウイルスの感染者が8000人を超えた。きょうから沖縄、広島、山口の3県に「まん延防止等重点措置」が適用されるが、何より急ぐべきはワクチンの追加(3回目)接種の前倒しである。

 沖縄は3日連続最多更新

 8日の新規感染者は、沖縄県で3日連続最多更新の1759人、東京都で1週間前の約15倍となる1224人だった。“第6波”の様相を深めているが、その原因は従来株より感染力の強いオミクロン株に急速に置き換わっているためとみられる。

 オミクロン株は、従来株に比べ重症化リスクは低いというデータが出ている。しかし一方で、亡くなった人もおり、入院した人や重症となった人もいる。

 重要なことは、重症患者をできるだけ減らし医療崩壊を起こさないことだ。そのためにも、政府が方針を示した宿泊療養施設の拡充、経口薬の供給を確実なものにしてほしい。それが新型コロナ以外の医療提供への圧迫を減らすことにも繋(つな)がる。

 オミクロン株による新規感染者の急増で、国民の不安が再び増大することが予想される。「まん延防止等重点措置」の拡大など、規制強化を求める声が強くなるだろう。

 しかし、経済・社会活動への影響が懸念される。オミクロン株への置き換わりで1日に20万人を超す新規感染者を出すに至った英国だが、規制強化をせず、「ウィズコロナ」の方針を続けている。米国もほぼ同様だ。

 感染対策と経済・社会活動の両立を図るために、どの程度規制するか難しいところだが、冷静な現状分析と予想から適切な判断を求めたい。われわれ国民一人一人に求められることは、これまで以上に基本的な感染対策を徹底することである。

 一方、オミクロン株の感染と重症化への対策に効果が十分期待でき、判断に迷う必要がないのがワクチンの追加接種である。岸田文雄首相は「先手先手の対策」を言うが、追加接種の前倒しに全力を挙げて取り組む姿勢が見えない。菅義偉前首相がワクチン接種加速のため、過去の行政の慣例を打ち破って、2回目までの接種を成し遂げたと同じような姿勢が見られないのはどうしたことか。

 追加接種については、米国では開始時期を2回目接種の6カ月後から5カ月後に短縮して行い、12~15歳もその対象にするよう推奨している。イスラエルなどは、高齢者などを対象に4回目接種が始まっている。

 後で軌道修正はされたが、日本では厚生労働省が追加接種の開始時期を8カ月後とすることに固執したことが尾を引き、ワクチン供給や自治体の態勢が整わないように見える。水際対策の限界、オミクロン株の感染力の強さを考えれば、現在の状況は十分想定された。にもかかわらず、追加接種に官僚的な対応しか取れなかった。

 国と地方は協力せよ

 遅れを取り戻すため、政府はワクチンの追加確保と地方自治体の態勢づくりを支援し、国と地方が協力して前倒しに全力を挙げるべきである。特に、重症化リスクの高い疾患を持つ人や高齢者への追加接種が急務だ。