【社説】皇位継承報告 男系維持への重要な一歩


皇位継承報告

 日本の国の「かたち」の根底にある男系男子による皇位継承を守っていくために重要な一歩が踏み出された。安定的な皇位継承などを議論する政府の有識者会議(座長・清家篤元慶応義塾長)が、旧皇族の皇籍復帰案を含む最終報告書を岸田文雄首相に提出した。

 旧宮家男子の復帰案明記

 報告書は「歴代の皇位は例外なく男系で継承されてきた」とし、「大きな仕組みの変更は十分慎重であるべきだ」との立場から、天皇陛下から秋篠宮殿下、御長男の悠仁殿下までの皇位継承を「ゆるがせにしてはならない」とした。当然のこととはいえ、明記した意味は小さくない。

 悠仁殿下以降の皇位継承については「具体的に議論するには機が熟しておらず、かえって皇位継承を不安定化させる」として、皇族数確保を優先すべきだとした。悠仁殿下以外の未婚の皇族がいずれも女性であることから「悠仁さまの継承時に、他に皇族がいなくなる事態は避ける」必要があるためだ。

 その具体策として①女性皇族が結婚後も皇室にとどまる②皇族の養子縁組を可能とし、旧宮家の男系男子が養子として皇籍復帰する――の2案を提示。2案で十分な皇族数を確保できない場合は③旧宮家の男系男子を法律で直接皇族とする――との案も示された。旧宮家男子の皇籍復帰案が明記されたのは初めてで、画期的なことだ。

 女性皇族が婚姻後も皇室に残る場合は、その配偶者と子供は「皇族という特別の身分を有せず、一般国民としての権利・義務を保持し続ける」とした。女系天皇の誕生に繋(つな)がらないための配慮で、妥当な判断である。

 皇族数確保を優先し、具体策として旧皇族の男系男子の皇籍復帰を挙げたのは、悠仁殿下以降の代に備え、皇統に属する男系男子を増やすためだろう。皇籍復帰した旧宮家男子の皇位継承資格については「持たないことが考えられる」とされているが、将来誕生した男子が資格を有する道に繋がりうる。

 旧宮家の皇籍復帰に対して国民の理解が深まるには、さらに時間が必要との判断も有識者会議にはあったと思われる。かつては保守系の有識者の中で論じられても、一般的には問題にされなかった。旧宮家の存在自体、国民の認識が薄かった事情を考えると無理もなかった。

 しかし、皇統を有する11宮家が戦後、連合国軍総司令部(GHQ)の圧力によって廃止されたことなどが徐々に知られるようになり、今回は皇籍復帰案が最終報告書に明記された。皇室の伝統を顧み、議論を深めることによって、国民の理解を得られることを示している。

 真摯に皇室の将来考えよ

 岸田首相は「国会に報告するとともに、しっかり今後の対応を行っていきたい」と述べた。今後、国会で具体的な議論、検討そして法整備を進めていくことになるが、自民党と野党の立憲民主党などでは意見の隔たりがある。報告書は「皇室をめぐる課題が、政争の対象になったり、国論を二分したりするようなことがあってはならない」としている。党利党略を捨て、真摯(しんし)に日本と皇室の将来を考える議論を求めたい。