【社説】オミクロン株 水際対策・情報収集に万全を


27日、ドイツ南部ミュンヘンの空港で、新型コロナウイルスの検査を受ける旅行者(EPA時事)

 新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」が、世界的拡大の兆候を見せている。

 感染力が増加し、ワクチンが効きにくい可能性が指摘されている。水際対策や情報の収集・分析などに万全を期し、日本国内での感染を抑えていく必要がある。

 世界各国で感染確認

 南アフリカで最初に発見されたオミクロン株は、ドイツ、英国、オランダ、ベルギーなど欧州を中心に感染報告が相次ぎ、香港、カナダ、オーストラリアなど世界各国で感染が確認されている。

 オミクロン株は、人の細胞に侵入する際の足掛かりとなる表面の突起「スパイクタンパク質」に約30カ所の変異があると言われる。世界的に猛威を振るったデルタ株の変異は8カ所であったのと比べ、桁違いに多いことから、感染力が増しているのではないかとの専門家の指摘がある。また、ワクチン接種によってできた抗体が結合しにくくなり、ワクチンの効果が減少する可能性も指摘されている。

 しかし、現状ではデータが限られており、従来株に比べどの程度危険かははっきりしない。オミクロン株を最初に確認した南アの医師は、感染が疑われた30人の症状は軽く、入院することなく回復したことを明らかにしている。ただ感染力が増加している可能性が考えられる以上、早急に水際対策を強化するのは当然だ。

 各国は入国制限や規制を再導入し警戒を強めている。豪州では過去2週間以内に南アなどアフリカ9カ国に滞在していた外国人の入国を禁止。7月に新型コロナ関連の規制をほとんど解除した英国では、イングランドの公共交通機関や店舗でのマスクの着用を義務付けた。

 岸田文雄首相は、外国人の入国をきょうから1カ月、全世界を対象に禁止すると発表した。日本人の帰国者に対しても、ワクチン接種などを条件に自宅での待機期間を最短3日としていたのを、再び14日間に延長する。「最悪の事態を避けるための緊急避難的な予防措置」と岸田首相は説明している。

 ビジネス目的に限ってではあるが、海外との往来も11月からようやく緩和されたところだ。海外からの技能実習生の入国を前提に事業を予定していたのが、突然の入国禁止で計画の中止や変更を余儀なくされる事業者も少なくないと思われる。株式市場も、航空や鉄道を中心に、日経平均が一時500円以上値下がりするなど、経済の先行きに影を落としている。

 南アは、オミクロン株の危険性が確認されていない段階で、各国が入国を禁止したことに強い不満を表明している。ただ、未知の部分が多いオミクロン株を水際で阻止することに、今は万全を期さなければならない。当面はやむを得ない措置だ。

 必要以上の萎縮は避けよ

 だがオミクロン株への警戒から、動きだした経済活動などが必要以上に萎縮するのは望ましいことではない。

 危険度がそれほど高くないことが分かった場合は、入国禁止措置を速やかに緩和すべきである。そのためにも情報の収集と分析が急がれる。