【社説】コロナ総合対策 医療の備えあれば心強い
政府は新型コロナウイルスの「第6波」に備えた総合対策の「全体像」を決定した。入院受け入れ体制を今夏の「第5波」ピーク時の約3割増しとすることなどを柱としている。医療の備えがあれば心強い。その下で感染対策と経済社会活動の活発化を両立させていきたい。
約3割増の病床を確保
岸田文雄首相は新型コロナ感染症対策本部の会議で「重要なことは、最悪の事態を想定し、次の感染拡大への備えを固めていくことだ」と述べた。第5波のピーク時において、新型コロナを発症した患者の入院先が見つからず、自宅療養中に死亡するケースが相次いだことへの反省によるものとみられる。
対策では第5波と比べて感染力が2倍になった時を想定し、全国で約3割増の3万7000人分の病床受け入れ体制を構築する。また、臨時医療施設や入院待機施設を今夏の4倍弱、約3400人分を確保する。
自宅・宿泊療養者は、ピーク時で約23万人に達すると想定。これまで保健所に限られていた健康観察を、約3万2000の医療機関と連携して行い、オンライン診察なども進めていくとしている。
第5波は、感染力の高いインド由来の変異株の拡大によるところが大きかった。今後さらに感染力の強い変異株の出現や流入の可能性が否定できない。日本国内のワクチン接種率が7割を超えたとはいえ、これからウイルスに感染しやすくなる冬に入ることもあり、第6波が訪れるとみる専門家は少なくない。
対策の「切り札」と位置付ける経口治療薬(飲み薬)については、160万回分を確保するめどをつけたという。今年度中に約60万回分確保するとのことだが、前倒しできるものはどんどん前倒して供給すべきだ。治療薬開発には1種類当たり最大約20億円支給される。ウィズコロナを見据えた重要な施策だ。
コロナ患者の受け入れ可能と申請し補助金を受け取りながら、実際は稼働していない「幽霊病床」が問題になった。12月から医療機関別の病床使用率を毎月公表し、ピーク時の病床使用率を8割以上に保つことを目指す。当然の措置だが、これを実施できるように看護師の確保など急ぐ必要がある。
現在の感染者、重症者や死亡者の減少の最大の要因がワクチン接種によるものであることは明らかだ。しかし接種から6カ月で抗体値は90%減少するとの研究報告も出ている。そのため総合対策では、3回目接種を12月から開始し、来年3月をめどに企業や大学での職域接種を行うこととしている。今後も接種率を高める働き掛けを続けるべきである。
「3密回避」も継続を
ワクチン接種の進展に加え、治療薬の使用、さらに今後は経口薬の使用も見えてきた。入院受け入れ体制も拡充されていく。一方、これまで行ってきた感染予防の習慣も大きな役割を果たしてきたことを忘れてはならない。これから年末年始に向かい、人と会ったり会食したりする機会も増えると思われる。「3密回避」など基本的な感染対策はこれまで同様にしっかり続けていきたい。