【社説】衆院選と家族政策 「絆」弱め社会を壊すのか


 31日に迫る衆院選で、家族政策が争点の一つになっている。選択的夫婦別姓(夫婦別姓)や「同性婚」の是非だ。
家族政策には社会の根幹に関わる家族観が反映される。衆院選は事実上の「政権選択」と言われるが、前述の二つの政策は日本の国力の礎である「家族の絆」を弱め、社会体制を大きく変えてしまう危険性があることを熟慮して一票を投じてほしい。

夫婦別姓や同性婚が争点

 夫婦が希望すれば、戸籍上も結婚前の姓をそのまま使える夫婦別姓については、立憲民主党をはじめ野党の多くが、その実現を公約に掲げている。政権交代した場合に「限定的な閣外からの協力」で立憲と合意する共産党は「ただちに選択的夫婦別姓制度を導入する」と特に力を入れる。

街頭演説を聞く聴衆 =24日午後、東京練馬区

 推進派が導入理由の一つとして挙げているのは、家名が絶えることを心配して結婚に踏み切れないでいる女性たちを救い、少子化対策にもなるということだ。しかし、この言い分は正しくない。

 少子化で一人っ子が増え、家名存続から結婚をためらう女性がどれほどいるというのか。存在するとしても、夫婦別姓を導入したからといって、問題が解決するわけではない。一人っ子同士の夫婦の場合、子供が1人しか生まれなければ一方の家名は絶える。また、子供にどちらの家名を名乗らせるかという新たな問題が出て、両家に軋轢(あつれき)が生まれる恐れもある。

 複数生まれたとしても、両家の家名を継がせるためには兄弟で別々の姓を名乗らせなくてはならない。それだと、親子と兄弟それぞれの絆に影響が出てしまう懸念がある。

 導入に慎重な姿勢を示す岸田文雄首相(自民党総裁)は子供の姓をいつ、どうやって決めるのかも含め「(国民の間に)さまざまな疑問がある」として、さらなる議論の必要性を強調した。こちらの方が課題を的確に捉えた主張だろう。働く女性が増えたことで、結婚に伴う改姓により不利益を被る女性が多くなっていることも理由に挙げられるが、旧姓使用を拡大すれば解決できる。

 さらに、本質的な問題がある。現行の夫婦同姓の制度では、姓は「家族の呼称」だが、夫婦別姓ではそれが「個人の呼称」に変わってしまう。これは現在、夫婦単位になっている戸籍制度を個人単位に変えることであり、ひいては社会の根幹を家族から個人単位に大きく変質させることを意味する。

 この点は、立憲や共産党などが公約にする同性婚にも言える問題だ。男女カップルに限定する現行の婚姻制度には、夫婦と子供を一体と考える家族観がある。一方、同性婚は自然には子供が生まれないから、当事者の幸せを目的とする。つまり、個人単位の社会を念頭に置いているのだ。

体制を選択する投票

 従って、夫婦別姓と同性婚の是非は、家族を単位とする日本の伝統的な社会を守るのか、それとも個人単位の社会に変えるのかという、まさに体制選択の問題であることを、有権者は自覚して投票すべきなのである。