ドコモ通信障害 重要インフラ担う責任自覚を
NTTドコモの通信障害が発生し、少なくとも約200万人に影響が出た。
いまや携帯電話サービスは生活に欠かせないものとなっている。混乱を招くことがないよう、トラブルに対する備えを万全にすべきだ。
サーバー切り替えで発生
障害は14日午後5時ごろに発生。同8時前に回復したが、利用者が携帯を一気に使い始めたことで通信量が3倍に増え、多くの携帯でつながりにくい状態が続いた。
このため、現在主流の通信規格である「4G」と高速大容量規格「5G」が復旧したのは15日午前5時すぎだった。その後も「ガラケー」と呼ばれる旧来型端末で主に利用される「3G」は、一部でつながりにくい状況が続いた。
障害によって、音声通話やインターネット交流サイト(SNS)、動画視聴のほか、ドコモの「d払い」などスマホ決済を利用できなくなるなどの混乱が生じた。ドコモだけでなく、ドコモ回線を利用してサービスを提供する格安スマートフォン会社も影響を受けた。
携帯、中でもスマホは社会や生活のさまざまな場面に浸透している。地図の機能も果たし、飲食店やタクシーの予約もスマホ1台でできる。通信障害が起きれば、生活の利便性は大きく損なわれる。今回の障害が生じたのは夕方だったが、昼間であれば混乱はさらに広がった可能性がある。
ドコモによれば、障害はタクシーの決済端末や自動販売機などIoT(モノのインターネット)機器のサーバーを切り替える作業で発生した。新設備への移行がスムーズにいかず、いったん旧設備に戻したが、IoT機器から想定以上の量の位置情報が送られてきたため通信を制限した。
金子恭之総務相は「国民生活の重要なインフラである携帯電話サービスで、大規模な障害が発生したことは大変遺憾」と述べた。電気通信事業法などでは、3万人以上が119番などの緊急通報を1時間以上利用できない状態が生じた場合を「重大な事故」としている。総務省は今回の障害が該当するかどうかを判断し、行政指導に至る可能性もある。
ドコモの田村穂積副社長は「ご迷惑をお掛けし深くおわびする」と陳謝した。サーバーの切り替え作業で見通しの甘さがなかったか検証するとともに、バックアップ体制の強化など再発防止を徹底すべきだ。
ドコモだけでなく、KDDIやソフトバンクも過去に大規模な通信障害を起こしている。今回のドコモの事案を機に、携帯各社には混乱の芽を摘むためのチェックが求められよう。
これから5Gが普及すれば、スマホは家電や自動運転車ともつながるようになる。障害が発生すれば、混乱はさらに大きくなろう。携帯各社は、責任がますます重くなることを自覚する必要がある。
複数回線使用の普及を
海外では一つの携帯端末で複数の回線を使うことができる。利用者が通信障害に備えることができるよう、日本でも普及させていくべきだ。