衆議院解散 国難対処へ論戦盛り上げよ


衆議院が解散された。岸田文雄内閣が4日に発足してからわずか10日後で、31日の投開票までの選挙期間も戦後最短だ。候補者は、わが国が直面している難局に対処するため、具体策を掲げて論戦を盛り上げ、自公政権か、共産党と「限定的な閣外協力」で合意した立憲民主党中心の政権かを選択するための判断材料を有権者により多く提供してもらいたい。
 

衆議院本会議場=2021年10月11日(UPI)

理解難しい閣外協力

 岸田首相は記者会見で今回の総選挙を「未来選択選挙」と名付けた。その中で特に強調したのが首相の看板政策である「新しい資本主義」の方向性を示すことだった。「成長と分配の好循環」こそ新しい時代に必要であるとし、「官と民の協力」の必要性を説いた。

 ただ、岸田首相が当初主張した金融課税を見送るなどブレも露呈している。立憲との違いが分かりにくいことからも「成長」について、さらに明快な説明を求めたい。「まず分配を」と訴える立憲も財源論に説得力を持つべきである。

 新型コロナウイルス対策に関し、立憲は「政府の病床確保対策が進まず、感染爆発に対応できなかった」と批判ばかりを展開する。ただ政権与党がコロナ対策を指揮し、ワクチン接種率が高まることで1日当たりの感染者数を激減させてきた実績は評価に値する。岸田首相が「病床確保策の全体像、骨格を示すよう指示する」ことを明らかにしたが、危機管理の強化にどの程度取り組んでいるか注目されよう。

 憲法改正をめぐっては、自民と立憲で明確な違いが出た。自民は「時代の要請に応えられる『日本国憲法』を制定するために力を尽くす」と公約に書き込んだ。

 一方、立憲の公約には憲法の記述がない。枝野幸男代表は「コロナ禍でそんなところに膨大なエネルギーを使っている余裕はない」と言い切った。

 しかし、改憲は最大の国家的課題である。国の在り方をどう描くのか、自衛隊の位置付けや国際貢献のありよう、緊急事態への対処についての明確な指針を示すことができなければ政権を目指す政党としては失格だ。

 この論議を避ける背景に共産党との「閣外協力」の合意があるのではないか。合意の影響で選挙公約に制限が加えられているとすれば選挙目当ての野合以外の何ものでもない。

 立憲の有力支持団体「連合」の芳野友子会長は「連合推薦候補者の選挙対策事務所に共産党が入り込んで、両党の合意を盾に、さらなる共産党政策をねじ込もうという動きがある」と非難し、「共産党の閣外協力はあり得ない」と語っている。これに対して枝野代表は「心配には当たらない」と述べた。

 だが、それで連合は納得できるのか。日米同盟、自衛隊、「天皇制」などの根本政策で違う見解を持っているはずの立憲が、なぜ革命政党である共産と閣外協力するのかを国民に対しても説明すべきだ。

深刻な課題で具体策を

 少子高齢化や中国、北朝鮮による脅威の高まりなどの深刻な課題についても具体策を示しながらの論戦を期待する。